呼称 | ・第1期黎明先遣軍指揮官 ・人間の英雄 ・雷霆の主宰者 |
種族 | 【過去】 ヒューマン 【現在】 神 |
外見年齢 | 35歳 |
身長 | 205㎝ |
趣味 | ・祈りを捧げること ・カタストロフを退治すること |
好きなもの | ・いかずち ・自分の正義 |
嫌いなもの | ・人を惑わす邪悪 ・正義の道を遮るもの |
出身地 | ブライト王国聖堂修道院 |
現在地 | カタストロフの戦場 |
現在の身分 | 雷霆の主宰者 |
関連人物 | 【妻】![]() |
CV | 速水奨 |
誕生月 | 12月 |
※「HP・攻撃力・防御力」は上限が存在しないため記載しません。
※()内はPVPでのステータス
クリティカル率 | 82.2 |
命中 | 0 |
回避 | 1003.7 |
魔法効力 | 110.22 |
魔法抑制 | 0 |
速度 | 40.3 |
自動回復 | 0 |
魔法耐性 | 50.7 |
物理耐性 | 24.96 |
吸収力 | 0 |
クリティカル増幅 | 38.16(54.83) |
クリティカル耐性 | 5.6 |
洞察 | 72.02 |
根性 | 26.9 |
治療効果 | 0 |
治癒 | 0 |
攻撃速度 | 0 |
クリティカル回避率 | 1.5 |
防御貫通 | 0 |
魔法貫通 | 20.54 |
熟知 | 0 |
受け流し | 0 |
腐食 | 0 |
緩和 | 30.12 |
ダメージ耐性 | 0 |
シールド効果 | 0 |
SP回復効率 | 0 |
Lv.1 | 敵が最も多い場所に瞬間移動して、水平方向に7個のいかずちを投げつける。 それぞれのいかずちは敵を貫通して攻撃力×180%のダメージを与える。 |
Lv.2 | ダメージが攻撃力×190%に増加。 |
Lv.3 | ダメージが攻撃力×200%に増加。 |
Lv.1 | 戦場の上空に雷雲を18秒間召喚する。 雷雲は4秒ごとにザフラエルから最も近くにいる敵に対して攻撃力×150%のダメージを与え、短時間スタンさせる。 |
Lv.2 | ダメージが攻撃力×160%に増加。 |
Lv.3 | 雷雲が追加でターゲットの最大HPの5%にあたるダメージを与える。 このダメージはザフラエルの攻撃力の200%を超えない。 |
Lv.4 | ダメージが攻撃力×170%に増加。 |
Lv.1 | 味方に最も近づいている敵の背後に瞬間移動し、ターゲットをノックダウンさせるとともに周りの敵に対して攻撃力×230%のダメージを与え、同時に8秒継続し攻撃力×500%のダメージを吸収するシールドを獲得する。 シールド継続期間中は通常攻撃が近接攻撃に変化し、シールドが消えると元の位置に瞬間移動で戻る。 |
Lv.2 | シールドの耐久値が攻撃力×700%に増加。 |
Lv.3 | ダメージが攻撃力×250%に増加。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル30が必要 ダメージが攻撃力×260%に増加。 |
Lv.1 | 戦闘中、敵にダメージを与えるとともに10秒間感電させる。 感電した敵は最大HPの12%を超えるダメージを受けた時、最も距離の近い敵に導電して、その敵は受けたダメージの30%に相当するHPが流失する。 |
Lv.2 | 発動条件が最大HPの10%に減少する。 |
Lv.3 | 敵が流失するHPが受けたダメージの50%に増加。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル60が必要 発動条件が最大HPの8%に減少する。 |
初期 | スキル「ライトニングラッシュ」発動後の近接攻撃が強化され、敵に攻撃力×60%のダメージを9回与え、中断効果と短時間のスタン効果を付与するようになる。 |
+10 | ダメージが攻撃力×70%に増加。 |
+20 | ダメージが攻撃力×80%に増加。 |
+30 | スキル「サンダークラウド」が追加で1人のターゲットを攻撃する。 |
+40 | スキル「サンダークラウド」の攻撃の間隔が2秒になる。 |
3/9 | 敵がザフラエルにダメージを与えた時、0.5秒間スタン状態になる。 同じ敵は8秒内に1回しかスタン状態にならず、シールドなどによりダメージが吸収される状態でも、スタン状態は効力を発揮する。 |
9/9 | 敵がザフラエルにダメージを与えた時、2秒間スタン状態になる。 同じ敵は8秒内に1回しかスタン状態にならず、シールドなどによりダメージが吸収される状態でも、スタン状態は効力を発揮する。 |
【ゲーム内説明】 セレスチアルのメイジ英雄。 爆発アタッカーと組み合わせて敵を感電させる。 |
登場時 | 神々が全て慈悲深いと思わぬことだ。 |
移動時 | 言動に気をつけるがいい。神々は常にお主を見ている。 |
通常攻撃 | お主の所業、雷火でしか浄化できぬであろう。 |
スキル1 | 雷が空を舞う。 |
スキル2 | 異端の暴徒よ、貴様には逃げ場などないぞ。 |
スキル3 | —— |
必殺技 | 冒涜者よ、お主の傲慢が天の怒りを招いたのだ。 |
勝利時 | 真理と神に跪くがよい、凡人どもよ。 |
神話時 | 聖なる光は優しすぎる。これからはいかずちを持って人々を処罰しよう。 |
旅館 | 人間は欠点の多い生き物、そんな彼らの自惚れと貪欲が終わりのない戦争を引き起こし、悲劇を繰り返している。 |
雷霆を授かりし神、ザフラエルーー
彼は神々により選ばれ、神と昇格した元人間だった……。
幼い頃ーー
敬虔な聖職者である両親を持つザフラエルは、聖堂管轄下のとある修道院で暮らしていた。両親は聖堂での階級は高くないものの、皆から好かれている。ザフラエルは周りと比べるとおとなしく、いつもひとり静かに女神様の後ろ姿を眺めているような少年だった。そして、めったに人が近づかない、ひとりきりになれるその空間が、彼にとって特別で、大好きな場所だった。ザフラエルはその場所で、よく信者たちの祈りを聞いていたのだ。なぜ大人たちは、こんなにも悩みを持っているのか、子どもだった彼には分からなかった。だが、成長するにつれ、それは悩みや願望ではなく、ただ欲望を満たすための祈りでしかないものだと気がつく。つまり、神と悪魔に区別はなく、自分の欲望を叶えてくれさえしてくれれば、拝まれる対象になるのだ。
ザフラエルが12歳の時ーー
各地で異常気象が起こり、大飢餓が発生した。人々が苦しんでいる中、貴族の領主たちはこれを利用して……。大部分の土地を少ない食料で買い占めるようになっていった。
身体の弱い老人や子どもたちは、餓死するか難民に成り果て、健康な青年たちは、領主たちに強制的に雇用され、わずかな食料で死ぬまで労働させられた。
聖堂を守る部隊と聖職者たちが、この異常気象に気づき、内密調査をするとーー
領主たちが裏でカタストロフと取引をしていることがわかった。なんと、カタストロフたちは、人間を生贄として捧げることを条件に、心を操る力を領主たちに授けていたのだ。カタストロフを討伐するため、聖堂はザフラエルの両親を含めた4人の聖職者と精鋭部隊1小隊を派遣する。
彼らが領主の土地にたどり着くとーー
人々が聖職者たちに、殺意を向けていることに気づく。そして、1人の領民が叫び出した。
「この天災は神の下した罰なんだろう!? しかも、修道院の倉庫には有り余る食糧があるっていうのに、我々に分け与えようとしないとは、どういうことなんだ!?」
領主たちは、人々に嘘の噂を流していたようだった。そして、ほとんどの人々は、心を操られているため、その噂を信じ切っていたのだ。これに煽られた領民たちは救済に来た聖職者と兵士たちを囲み、彼らを無残に殺害する。それでも怒りが収まらない領民たちはザフラエルの両親の首を切りおとし、それを掲げながら、修道院に向かっていったのだったーー
その日の夜ーー
暴民と化した人々は、修道院に押し寄せて……。彼らは女神像を押し倒し、倉庫を略奪し、聖職者の死体と教典を広場に集めて燃やしたのだ。
ザフラエルは暴民の中からかつて自分の母親が救済するためにパンを分け与えた人たちを見つける。
そして……。無残な姿に成り果てた両親、壊された女神像、修道院から燃え上がる炎……。嘘の噂に踊らされ、野獣と化した人々は、カタストロフよりも残虐に見えた。
両親の仇を討とうと、ザフラエルが前に飛び出そうとするとーー
17、8歳ぐらいの青年が彼の前に現れる。
「ザフラエル……。君のお母さんは、君のことをそう呼んでいた。あの時、僕はザフラエルのお母さんからパンを分けてもらった……」
自分のことを『シレン』と名乗る青年は話を続けた。
「君のお母さんはきっとこんなところで死ぬことを望んでいないはずだ」
そう言って、シレンはザフラエルの仇討ちを止めたのだった。
数時間後ーー
他の修道院の聖職者たちが辿り着き、ザフラエルを安全な場所まで連れて行った。
両親を失ったザフラエルは、数年間、他の修道院で生活していたが、あの日の夜のことを忘れることはできなかった。
第一次カタストロフ戦争が勃発すると、ザフラエルは真っ先に軍に入り、カタストロフとの戦闘に身を投じた。人間の負の感情を力の源としているカタストロフたちは、両軍が接触した時が最大のチャンスだった。人間の兵士が恐怖や軟弱の感情を顕にすると、カタストロフたちはたちまち強力になるのだ。だが、こうした不利な戦況の中でもザフラエルは固い信念のもとわずかな弱みも相手に見せない。そして、兵士たちを率いて次々と勝利に導き、たちまち軍の総帥にまで昇進していったのだった……。
ザフラエルの勇猛ぶりは、やがて神々の注目を浴びるようになり……。しばらくして、雷を操る神に任命される。俗人の傲慢や欲望は、長い時の輪廻に苦難を作り出してきた。聖なる光は、これらの人々にとって優しすぎたのだ。神々は、雷をもって戒めてほしいと、ザフラエルに告げたのだった。
神になったザフラエルは、エスペリアに以前から潜んでいる、双生魔という危険なカタストロフを追っていた。このカタストロフは、お互い絡み合った双子のような存在で、1つは暴虐、もう1つは欺瞞を象徴している、古代の悪魔だった。双生魔は人間の心の中にある、自惚れや欲望という弱点を利用して誘惑し、暴力と欺瞞に溺れさせる。そして、人間が繰り返す戦争から力の源である負の感情を吸い上げ、今か今かと誕生を待ちわびていたのだ。一度、双生魔がこの世に誕生してしまうと、世界に計り知れない災難をもたらしてしまう。ザフラエルは、それを阻止すべく、常に監視していた。
とある小さな村でーー
生贄を使って双生魔の降臨儀式を執り行おうとしているという知らせをザフラエルは受けた。彼が村に辿り着くと……。なんと、かつて自分が人間だった頃の妻が立っていたのだ。
「なぜ、君が……」
まさか彼女がカタストロフに加担している……? 状況がうまく飲み込めず、ザフラエルは言葉を詰まらせた。すると、彼女は涙を浮かべながら、ザフラエルに訴える。
「私たちの子どもが……カタストロフに襲われてしまったの。だから、お願い……助けて」
ザフラエルにとって、まさに青天の霹靂だった。自分たちの子どもが、そんなことになっているとは……。救い出してあげたい、そう思っていたが、全ては遅すぎた。
子どもの血肉は、すでにカタストロフに融合されている状態だった。ザフラエルはいつものようにいかずちの槍を振り上げたが……。槍を放つことができない。今とどめを刺せば、子どもも死ぬとわかっているからだ。
「お父……さん」
子どもが弱々しい声で、ザフラエルに向かって呼んでいる。だが彼は、これが自身を惑わすためにカタストロフが子どもを操っていることだとすぐに気がついた。
ーーもう子どもを助けることはできないーー
ザフラエルは、両親を失い修道院を燃やされた時から心に決めたことがあった。それはどんな事があっても公正無私に任務を全うすること。たとえ家族を犠牲にすることがあっても、悪には罰を与える。
カタストロフがこれ以上、人間の世界にのさばることを見過ごすわけにはいかない。この世界に正義の秩序を確立させなければ、人々を守る事は決してできない。
そしてザフラエルは……。いかずちの槍を息子にめがけて強く投げつけたーー
1、歴史の記録者
私の名前はエルボーーー
祖父はブライト王国大聖堂で歴史を記述する歴史家だった。
カタストロフとの戦争終結からもう40年経っている。今の平和な世の中も、かつて神々と各種族の先人たちによる大いなる犠牲との引き換えによるものだ。これら英雄たちの輝かしい偉業を記録するのが祖父の仕事だった。祖父の言葉によれば、偉大な功績を残した人たちは夜空に輝く星々のように、歴史という夜空に永遠と輝き続けるのだそうだ。私はかつて祖父の手伝いとして史料を整理したことがあった。だがその時、書物の中にいくつかおかしな記述漏れがあることに気づいた。
ーー……ブライト歴61年、冬。人間とカタストロフの戦争はもう30年もの間続いている。ほかの種族たちの協力はあれど、人間は未だにカタストロフに対し劣勢のままだ。女神デューラはエスペリアを救うべく、巨大な異空間を創り出し、カタストロフたちを隔離しようとしていた。ブライト王国の初代国王であるシレンは各種族の連合軍を指揮して、山々に侵入してきたカタストロフたちを退けた。後に、女神デューラは破滅の深淵を作り、大半のカタストロフを封じ込めるのに成功した……ーー
以上の文章は、祖父が整理した史料の内容を引用したものであり、戦争中である40年以上前にあった、数々の英雄の事跡を記載したものだ。
ただ唯一……。カタストロフに対抗し、多大な功績を上げたザフラエルに関する記述だけは見つけることができなかった。うっかりして記述漏れしていたとは考えられない。
まるで、誰かが意図してその記述を抹消したかのよう……。
祖父が他界してから、私は世界各地へと赴き、ザフラエルに関する言い伝えや功績を集めていたが、まったくといっていいほど、成果がなかった。
私は祖父のかつての旧友である、ブライト大聖堂の歴史家と聖職者にも接触した。しかし彼らも同じく、この事に関しては固く口を閉ざしたのだった。欠けたパズルのピースは、このままずっと歴史の中に埋もれてしまうのではないかと考えていた。
ーーそう、あの人に会うまでは。
王国最西端には小さな町がある。そこからさらに西へ進むと、ひと気のない荒野が続いているという、旅人が休息するにはうってつけの町だ。私は短い冬の時期を、この町の旅館で過ごしていた。
この旅館のロビーでは、夜になると、芳醇な酒と焼けた肉の香ばしい匂いが漂う。私は日課のようにヴァイオリンを奏でながら歌を歌っている。私が歌うそのほとんどは、ブライト王国の偉大なる王、シレンの物語だ。あの戦争が終結してから、この偉大な英雄譚をエスペリアの各地に広めている。
いつもより早く夜の帳が下りたある日ーー
この小さな旅館には、初めての客がよく訪れる。そのうちの1人である、旅人であろう老人が私の向かい側に座った。老人は黒みがかった深い紫色の帽子で顔をしっかりと隠している。わずかに白い髪だけが見えていた。最初はあまり気に留めていなかったが、私が演奏を終えると、酒を奢ってくれた。そしてゆっくりと、今まで聞いたことのない物語を語ってくれたのだったーー
2、老人の話
語られた内容は、ザフラエルに関する物語だった。
40年前のある日ーー
銀雪平原でシレンの率いる各種族の連合軍とカタストロフとの間で激しい遭遇戦が起きたそうだ。この戦いに乗じて、難攻不落と謳われた連合軍の拠点であるインディスト要塞を、とあるカタストロフが襲撃したようで……。
「駐屯軍は致命的な打撃を受け、主教のハイントも殺された……。インディスト要塞が陥落すると、ザフラエルととあるカタストロフとの噂がまるで疫病のように広まったんじゃ」
インディスト要塞陥落は史料にも詳しく記録されていたが、私はこのような噂が広まっていたことまでは知らなかった。
「どのような噂だったんですか?」
旅館の隅に置かれていたろうそくの灯りが、一瞬消えかかる。そして、静かに蝋が1滴垂れ落ちていった。
「……ザフラエルは、かつてこのカタストロフをわざと見逃したという噂じゃ」
これを聞いて私は首を傾げた。聖堂の記述によると、ザフラエルは公正無私で決して悪を許さない神であったとされる。
(そんな彼がどうしてカタストロフを……?)
だが、私は思ったことを口にせず、そのまま老人の話を聞き続けることにした。噂はどんどん広まり、共に戦い、挑み、命を落とした兵士たちの親族でさえ、ザフラエルを信用しなくなっていった。それどころか、一部の者たちはザフラエルにインディスト要塞陥落の責任を負わせようとしていたという。
「噂がどこから広まったのかはわからんが、連合軍の人々は団結しなくなり、次第に神に対して疑いを持つようになったんじゃ。そして一度火がつくと、その勢いは誰も止めることができぬ。偉大なる王シレンもインディスト要塞の陥落で12歳の息子マルスを失っていたんじゃが、それでも王はザフラエルを信じて疑わなかった。どうやらインディスト要塞を襲撃した例のカタストロフはザフラエルの全てを知っていたようでな。この機会を利用しようとしたんじゃ」
老人はここまで話すとしばらく口を閉ざした。インディスト要塞陥落の記録にはこのカタストロフの存在は記載されていない。
(いったい誰なのだろうか?)
思わず前のめりになり、老人の顔を伺った。まだほんの少ししか話していないが、私はこの老人の物語に興味津々だった。
「その後については知ってのとおり『凍てつく谷』で最後の決戦じゃ。これは連合軍最後の作戦じゃった。カタストロフたちをすべて『凍てつく谷』に誘い込み、女神デューラが封印する。この作戦にシレンは自ら囮となり、カタストロフたちを誘い込んだんじゃ」
……熾烈な戦いだった。数百にものぼる英雄たちの血で谷は赤く染まり、カタストロフたちの怒号は谷中に広がった。奴らは人間の兵士を切り裂き、鎧ごと踏み潰していった。カタストロフたちは、これまでの数倍にも及ぶ力を使って谷中のすべての出口を塞ぎ、シレンと部下たちの退路を断った。連合軍の部下全員が倒れ、最後にシレンと2名の護衛のみが残った。この時デューラが創り出した破滅の深淵がついに完成し、増援にたどり着いたザフラエルがシレンを救出したのだ。
「シレンは自分の命を引き換えにして人間に勝利をもたらそうとしたんじゃ。だが、ザフラエルはシレンこそが新生ブライト王国を導くにふさわしいと考えた」
ザフラエルが現れるところにはいつも例のカタストロフの姿がある。しかし今回は、シレンに用があったようで……。そのカタストロフは1匹の怨霊のような姿でシレンを攻撃したという。ザフラエルが攻撃を防ごうとしたが間に合わず、シレンは重傷を負ってしまった。
偉大なる王シレンの生涯のことは以前書籍で読んだことがある。彼はカタストロフとの戦闘で全身傷だらけになり、さらには左目を失ったということも書かれていたが、彼がこのような目に遭っていたということはどこにも記されていなかった。
老人は話を続けた……。『凍てつく谷』の臨界点に近づいた空間エネルギーは小規模の爆発を起こし始め、破滅の深淵に近づくカタストロフはどんどん引き込まれていった。ザフラエルと、そのカタストロフは破滅の深淵のすぐ近くで決戦を繰り広げていた。ザフラエルの雷鳴が谷中に鳴り響けば、カタストロフの刃は襲ってくる雷雲を次々と切り裂いていく。
「目的は私なのだろう」
雷雲の中で叫ぶザフラエルの声は低く、少し震えていたようだった。
「マルスは……まだ幼い子どもだった……」
「なら、オーウェンは?」
カタストロフの顔は怒りのあまり少し歪んで見えた。その目は残忍さと狂気が満ちている。
あれは激しい死闘だった。雷霆の力を操る神と、復讐の刃を手にしたカタストロフはどちらも相手を本気で殺そうと思っていて、互いに致命傷を負わせるような攻撃を繰り返していた。だが、カタストロフが単身で神に敵うはずもなく……。決定的な一撃を受けたカタストロフは、膝から崩れ落ちた。ザフラエルはカタストロフの前に立ちはだかる。あとは手にしている、いかずちの槍でカタストロフの胸を貫くのみ。だが、ザフラエルはまたもや躊躇している。すると、カタストロフの周りを飛んでいる2人の怨霊が目の前の神を嘲笑い始めた。
「雷霆の神よ、見ろ……。いったい誰がこいつをこのような化け物に変えたんだ? これが神の言う正義なのか?」
「……オーウェンのことは、悪かったと思っている」
ザフラエルは嘲笑を無視し、怨念に満ちたカタストロフの両目を見て話す。いつもの威厳ある声が、少し枯れているようだった。
「もう一度、やり直せたとしても、私たちは……きっと同じことを繰り返していただろう……」
ポツリポツリと語りかけるように、ザフラエルは言葉を紡いでいく。そしてーー
「だが……ルクレティア。君と私は……過ちの中に囚われている……。共に……終わらせよう」
ザフラエルの手に持っていた槍が光り出す。どうやら決意をしたようだった。彼は後ろを向き、シレンに最後の別れを告げ、カタストロフの前に向かっていった。相手の刃が彼に振り下ろされたが、彼は相手を両腕できつく抱きしめ、共に破滅の深淵へと落ちていった……。
その直後ーー
空間エネルギーが大爆発を起こし、『凍てつく谷』の大半が瞬時に破滅の深淵へと吞み込まれていったのだったーー
「…………」
物語を聞き終えても、私は頭を殴られたようなショックが全身を貫き続いていた。少しばかり間を置いて、私はゆっくりと口を開いた。
「あ……あなたの話が正しければ……。もし……もし、ザフラエルがいなかったら、偉大なる王シレンも……『凍てつく谷』で戦死していた、と……? このようなことが、どうして今まで、隠されていたのです……?」
老人は私の質問には答えなかったが、彼の視線の先には多くの祈りを捧げている信者がいた。ここ数十年間、ブライト大聖堂の名声はこれまでとないものになっていて、その影響は王国の隅々まで行き渡っている。ここのような辺境の町にも多くのブライト教の信者が存在しているのだ。
「あんたの歌はとても澄んでいるのう……」
老人の声は少し恍惚としていた。
「ザフラエル……。あいつはわしの会った中で1番敬虔な信者だったよ。彼もまた自身がやるべきことをやっただけ。ザフラエルの功績は本来なら人々に忘れ去られるべきではない……。だが、聖堂の名誉は真っ白な燭台のような存在。いかなる汚点もあってはならぬのじゃ。神であるザフラエルは人間を虐殺したカタストロフを見逃した。だが、彼もどうすることもできなかった。そのカタストロフはルクレティア……。かつてはザフラエルの妻だった者なんじゃ」
テーブルの上のろうそくは燃え尽き、老人も酒を飲み終えた。彼はテーブルに銅貨を2枚置き、立ち上がった。
「待ってください!」
私はふとある問題に気づいた。
「あの時のことはシレン王と2人の護衛のみ目撃したはず……。どうしてあなたはそこまで詳しく知っているのです?」
老人は何も言わずゆっくりと旅館の出口に向かっていく。旅館のドアが開き、朝日が差し込んでくるとーー
帽子に隠された老人の顔が見えたのだ。その表情は、老人とは思えないぐらい凛々しく、強靭な眼差しをしていた。そして1番印象に残ったのは、左頬から左目にかけての長い傷跡だったーー
3、後世の人たちへ
人はやがて年老いて行くが、英雄の物語はいつまでも語り継がれる。私に残された時間もそう長くはない。身体の衰弱とともに、私も旅を続けることができなくなっていった。
……ペンを手に取るも、老人から聞いたザフラエルの物語と考察を記録すべきか躊躇している。このことは歴史書に記録されることはないだろう。だが歴史に否定されても、夜空に輝く星のようにいつまでもどこかで輝き続けると私は信じているーー
カタストロフの惑わしにより、ザフラエルは不幸な幼少期を過ごすことを強いられた。一夜のうちにカタストロフを憎むようになり、惑わされた人間でさえ心底憎む執念深い男になってしまった。しかし同時に、聖職者である両親の影響を受け、彼は敬虔さと慈愛を持つようになった。両親を失ってからしばらくは、復讐と憐憫の矛盾に気がおかしくなる思いをした。そんな気持ちを抑えるため、ザフラエルはしばらく留まることになった修道院の周辺で、はぐれたカタストロフを見つけては、それを退治し、内心の憎しみを和らげていた。
第一次カタストロフ戦争が勃発すると、かつてシレン大帝に命を救われた恩を返すため、ザフラエルは軍に志願し、その後黎明先遣軍の指揮官になった。彼は複雑で矛盾した気持ちを、正義を実行するという決意に変えた。それ以来、ザフラエルは複雑な感情に左右されることなく、正義という名のもと、エスペリアに潜むカタストロフたちを退治していくことに専念した。たとえ信仰に背く事であっても、正義のためなら、ためらいなく実行していた。
神になる機会が訪れると、ザフラエルはシレンのもとを離れた。今の彼にとって、より強い力と永遠の命こそが、自分の正義を貫き、自分の信仰を実現する最大の手段だったからである。
雷雲の中で作り出されたいかずちを手に集めて放つ武器。
想像を絶するエネルギーと高熱により、近づいた者を灰燼と化す。
※未実装
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