シェミーラ【グルーミーバンシー】

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基本情報

呼称グルーミーバンシー
種族【過去】
ヒューマン
【現在】
グレイヴボーン
外見年齢28歳
身長170㎝
趣味・裁縫
・悲しいメロディーを歌うこと
好きなものブルーベリーワイン(現在は飲めない)
嫌いなもの・戦争
・病気
出身地ブライト王国南西に位置する小さな村
現在地ボーングレイヴ
関連人物【息子】

【夫】
CV福原綾香
誕生月8月

データ

陣営グレイヴボーン         
タイプ智力型
職業メイジ
メインロール範囲攻撃

ステータス

※「HP・攻撃力・防御力」は上限が存在しないため記載しません。

※()内はPVPでのステータス

  • 神話☆5ランク
  • T4装備
  • 専用装備40
  • 家具9(ランク最大)
  • 刻印80(白星)
  • エルダーツリー最大、絆ボーナスあり
  • 神器・コレクションなし
  • 狩りモンなし
クリティカル率67.2           
命中0
回避947.35
魔法効力39.99
魔法抑制0
速度40.3
自動回復0
魔法耐性50.7
物理耐性22.63
吸収力0
クリティカル増幅38.22
クリティカル耐性24.8
洞察0
根性45.89
治療効果0
治癒10.95
攻撃速度0
クリティカル回避率10.9
防御貫通0
魔法貫通20.76(26.84)
熟知0
受け流し0
腐食0
緩和0
ダメージ耐性0
シールド効果0
SP回復効率0

スキル

必殺技:トーチャーソウル

Lv.1自身の周りに大量の亡霊を呼び出して、周囲の敵に12秒間持続ダメージを与える。
持続ダメージの終了時に、与えたダメージの50%を吸収して自身のHPを回復する。
Lv.2ダメージが攻撃力×80%に増加、合計ダメージの100%のHPを回復するようになる。
Lv.3ダメージが攻撃力×90%に増加、持続中に25%のHPを予め回復するようになる。

スキル1:ライフスティール

Lv.1敵一体の生気を吸い取って自身のHPを回復する。
0.5秒おきに攻撃力×45%のダメージを与える。
Lv.2ダメージが攻撃力×50%に増加。
Lv.3ダメージが攻撃力×55%に増加、持続中はダメージが持続的に増加。
Lv.4ダメージが攻撃力×60%に増加。

スキル2:ソウルチェーン

Lv.1メイジ英雄一人の魂を鎖で縛り、攻撃力×100%のダメージを与え、数秒間沈黙させる。
Lv.2ダメージが攻撃力×130%に増加、自身のHPが多いほど、沈黙の時間が長くなる。
Lv.3ダメージが攻撃力×150%に増加。
Lv.4※解放には刻印レベル30が必要
ダメージが攻撃力×170%に増加。

スキル3:スピリチャル【パッシブ】

Lv.1自身のHPが多いほど、攻撃力が最大で30%まで増加する。
Lv.2クリティカル率が最大で30%まで増加。
Lv.3攻撃力が最大で40%まで増加。
Lv.4※解放には刻印レベル60が必要
必殺技「トーチャーソウル」使用後、シェミーラは残りHPを無視して最大上昇を獲得する。
この効果は8秒継続する。

専用装備:ソウルコントロール

初期戦場にいる敵の数が1人、2人、3人の場合、必殺技「トーチャーソウル」のダメージが12%/6%/3%増加する。
+10戦場にいる敵の数が1人、2人、3人の場合、必殺技「トーチャーソウル」のダメージが24%/12%/6%増加する。
+20戦場にいる敵の数が1人、2人、3人の場合、必殺技「トーチャーソウル」のダメージが36%/18%/9%増加する。
+30戦場にいる敵の数が1人、2人、3人の場合、必殺技「トーチャーソウル」のダメージが48%/24%/12%増加する。
+40戦場にいる敵の数が1人、2人、3人の場合、必殺技「トーチャーソウル」のダメージが100%/50%/25%増加する。

専用家具:絶望の涙

3/9自分のSPが満タン時、2秒間全ての制御効果に対して無敵となり、直ちに必殺技を発動する。
この効果は自分が他のスキルを使用しているときでも発動する。
9/9自分のHPが50%以下の時、必殺技「トーチャーソウル」の与えたダメージをシェミーラのHPとして回復する割合が30%増加するが、終了時にはHP回復の割合が30%減少する。

ステータス

※最大ランク時

HP1800
アーマー25
移動速度200
ダメージ増幅15%
吸着範囲15%

スキル1:スピリチャル

レベルが3上がるたびに、拾う範囲が1%アップする。

スキル2:ライフスティール

周囲の敵のHPを吸収し、範囲ダメージを与える。

特徴

【ゲーム内説明】
グレイヴボーンのメイジ英雄。
必殺技ですべての敵に継続ダメージを与え、長期戦に優れている。

セリフ集

登場時わたしの絶望をあなたにも味わわせてあげる
移動時ねえ、わたしの泣き声、聞こえるのかしら?
通常攻撃死になさい
スキル1あなたの生気、いただこうかしら?
スキル2人の魂は脆いものよ
スキル3——
必殺技絶望の深淵に落ちなさい!
勝利時悲しみはわたしの糧になるわ
神話時美しい鎮魂歌曲、歌ってあげましょう。
旅館部屋をいくら綺麗に飾っても……私は一人で寂しくうろつくだけ。来てくれてありがとう、これは来てくれたお礼よ。
 

エンブレム

ストーリー

誰しもがシェミーラのその姿を見れば、美しいと言うだろう……。しかしそれは、家族を失ったという過去が彼女を気丈に振る舞わせている。

悲壮感を漂わせる彼女の過去ーー

軍医であった夫ニルが、職権を悪用して兵士を殺害したという容疑にかけられてしまう。冤罪であってほしいと願う彼女の思いは、軍法会議ですぐさま打ち砕かれ、夫は死刑に処された。絶望の淵に突き落とされた彼女に追い打ちをかけるように、まもなくして息子のダイモンが不治の病にかかり瀕死の状態に……。しかし、医者はなす術がなく、ほどなくしてダイモンも息を引き取った。大切な家族を失い、生きる意味をなくした彼女は、毎日2人の墓を訪ねては、その前で涙を流した。声を上げて嘆き悲しむ彼女の声は、まるで挽歌のようだった。気づけば涙は血の涙となり、彼女が墓を訪ねた後は戦慄する光景だったという。それも涸れ果てたとき、彼女は両目の光を失った。

ある日、自分の名前を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。なんとも言えない感情が彼女の全身をかけめぐる。そう、死んだはずの夫がそばにいると確かに感じるのだ。彼女は必死に手探りで夫を探し、問い詰めた。

「なぜ罪を犯したの。なぜ家族を捨てたの。なぜ息子まで死ななければならなかったの」

「息子を救いに来ただけだ」

ニルの冷たく突き刺すような声が響く。その瞬間ーー

墓の土がぼこぼこと隆起し始めた音と共に聞こえてきたのは……。

「お母さん、僕、お父さんと一緒に行くね。もうこの世のものじゃないんだって。ほんとはお母さんのそばにいたかったけど、ダメって言われたんだ」

そう、愛する我が子ダイモンの声だった。何が起きているのか分からず怯える彼女を、優しく諭すように語りかけていた。

これ以上、家族と離れ離れになりたくないシェミーラは自分も一緒に連れて行ってほしいと2人に懇願する。ついてくるのであれば、生を放棄し、俗世に忌み嫌われる姿に形を変えなければいけないとニルに言われて……。家族と運命を共にすると決めた彼女は、迷うことなく夫と死の契約を取り交わしたのだった。シェミーラは巨大な鎌が自身の身体をつんざくのを、光を失った暗闇の中でもはっきりと感じた。しかし不思議と痛みは感じない。つまり、シェミーラはこの時をもってこの世のものではなくなってしまったのだった。

こうしてシェミーラは家族と再会を果たした。しかし、彼女の心の中から悲しみは消えることなく、それは無数の霊魂と化し、彼女とともに息づいている。絶望という深淵に落ちたシェミーラ……。美しき獣……。

「死を恐れないで。あなたが死を目前にしたとき、哀しく美しい挽歌が聴こえてくるでしょう。それは私の悲痛な泣き声なのです」

絆【団らん】

ーー男が目を覚ますと、キャンプ道具や荷物が散乱し、馬車の名かも荒らされていた。金目のものは全て奪われ、馬車を引く馬の姿もなかった……。月明かりがその惨状を残酷にも照らしている。

男は霧がかっている森を見渡し、死体が転がっていないことに安堵した。

「よかった……! レグニッツはうまく逃げてくれたようだ。きっと安全なところに隠れているのだろう」

彼の名前はジョーラ。レグニッツという息子を持つ、旅の商人だ。今回は成人して間もない息子を連れて、仕入れの旅に出ていた。彼は息子と2人きりの旅をとても大事にしている。長年レグニッツに寂しい思いをさせてしまった罪滅ぼしのようなものだ。ジョーラの妻は、身体がとても弱く、レグニッツを出産すると同時に帰らぬ人となってしまったのだ。レグニッツにとっては、ジョーラが唯一の家族である。しかし彼は、レグニッツがまだ幼いというのに、世界各地を飛び回る仕事をしていたため、隣の夫婦の家に息子を預け、長年家を空け続けていた。年に数回、家に戻ってくることもあったが、忙しいジョーラは生活費だけ渡して、すぐに旅立っていった。彼は息子を構ってあげられなかったことにずっと後悔していた。それゆえに、息子が成人すると、ジョーラはレグニッツを自分のそばに置き、2人で商売の旅をするようになったのだーー

彼らの旅は順調に進んでいた。特に今回の旅で、ジョーラはレグニッツの意外な才能を目の当たりにしたのだ。今まで父親の後ろで商売を見ていただけのレグニッツに初めて交渉を任せてみたのだ。すると、初めてとは思えないほど顧客とうまく接していた。さらに、お金の計算に関しても抜け目がなく、商人としての素質を持っているようだった。ジョーラはやはり、商人の息子は商人なのだと嬉しくなるのだった。

だがーー

不運なことに2人は野盗に襲われてしまって……。

なぜかジョーラの記憶は曖昧だった。覚えているのは、キャンプの準備をしている最中に突然野盗の集団がやってきたということと、レグニッツに早く逃げるように言って、野盗集団と戦ったということ……。

その後の事は何も覚えていない。ジョーラは長年旅をしていたので、ここ一帯で野盗が出現する事はよく知っていた。本来ならば、賞金稼ぎを雇って警護を依頼するべきだが、仕入れに予算をほとんど使い切ってしまったため、雇えなかったのだ。それに、ジョーラは息子と2人の時間を邪魔されたくなかった。商人のいろはをレグニッツだけに教えたいという思いから、2人だけで旅をすると決めていたのだ。

だが、まさかこんなことになるとは……。

ジョーラは息子を捜しに行こうとしたが、どの方角に逃げたのか全く思い出せなかった。立ち止まっていても仕方ないと考えたジョーラは、まずは自分の勘に任せて捜そうと動き出す。森の小道を進んで数時間ーー

気のせいだろうか……。ここは以前も通った道のように思える。だが、それがいつなのか……全くわからない。

周りは霧に包まれ、まるで自分の心と比例しているかのように、焦れば焦るほど霧もどんどん濃くなっていく。時折、背後に気配を感じて振り返るも、鬱蒼と茂る森と霧しかなかった。

(レグニッツ……どこにいるんだ?)

目を凝らしながら森を進んでいくと、人影のような物が横切っていった。

「レグニッツなのか!?」

急いでその場所に向かったが、誰もいなかった。こんなことが何度か続き、ジョーラはだんだんと疲弊してくる。彼は恐怖心を紛らわせるため、息子を捜すことだけに集中して先に進んだ。

しばらく歩いていると……。突然、霧の向こうから声が聞こえてきた。今度こそ……と思い、駆け寄ると、枯れ木の下に8、9歳くらいの男の子が倒れていたのだ。男の子は白い服を纏い、小声でなにかつぶやいていた。こんな森深くにどうして子どもがいるのか、不思議に思いながらジョーラは話しかけた。

「坊や。私は今、息子を捜しているんだ。年は15歳、名前はレグニッツ。背はあまり高くなくて、灰色の服を着ている。この近くで見なかったかい?」

男の子が顔を上げると、まるで大病を患っているかのように顔面蒼白だった。その子はゆっくりと首を横に振る。

「見てない」

消え入りそうなぐらい小声で答えてから、再び顔を下に向け、誰かに話しかけた。

「キキ、君は知っているの?」

男の子の目線を追ってみると、そこには人形が置いてあった。

「キキも知らないって」

「キキ?」

「うん。本当の名前はスティッキ。友達なんだよ。僕はキキって呼んでるんだ」

男の子は立ち上がりながら、人形をジョーラの目の前に持ち上げた。

「キキ、ごあいさつだよ! あのね。キキは人と話すのが大好きなんだ!」

ジョーラは少し困惑していた。人形はところどころ破れていて、縫い合わせた跡が見える。開いている口を見ていると、なぜか自分に向かって笑っているように感じた。だんだんと怖くなってきたジョーラは、キキと呼ばれる人形を直視できず、つい目を背けてしまった。

「キキが好きじゃないの?」

そんなジョーラの反応に、男の子が少しガッカリした様子で尋ねる。彼は慌てて取り繕い、人形に視線を合わせて挨拶をした。

「や、やあ! キキ。はじめまして。よろしくね」

「ふふ。キキもよろしくって言ってるよ」

「それじゃ坊や。私は息子を捜しに行かないといけないから。君もこんなところにいないで早くお家に帰りなさい」

「僕のお父さんとお母さんなら、おじさんの捜してる人を知ってるかもしれない」

「なんだって!? 君のお父さん達はどこにいるんだい?」

「あそこにいる」

男の子は霧の向こうを指しながら言った。

「それじゃお父さんとお母さんの所に連れて行ってくれるかな?」

「いいよ!」

男の子は嬉しそうに答え、軽い足取りで案内を始めたのだった……。ジョーラは男の子に連れられ、森の奥深くまで進んでいく。ふと、男の子の後ろ姿を見ると、白い服を着ているのではなく、包帯が巻かれていたのだ。それに気づいた瞬間、怯んでしまったが、レグニッツの行方を知るためなら……と、気持ちを切り替えて付いていくのだった。

しばらく進むと、薄っすらと明かりが見えてきた。近づいてみれば、それは篝火だということに気づく。

「お父さん、お母さん!」

男の子がその明かりに向かって走っていくので、ジョーラも一緒に行くと、その篝火の前には男と女が座っていたのだ。男はやせ細っていて、生気が感じられないくらいの顔色だった。女は失明しているのか、両目に布があてられていた。

「おかえりなさい」

女はとても優しい声で男の子を迎え、頭をなでている。そして、小声でなにかを話すと、男の子は頷き、すぐに霧の中に消えていった。

「迷子の旅人さん、こちらで少し休まれてはいかがですか?」

女は目が見えないはずなのに、ジョーラの方向に顔を向けて話しかけた。

(この一家、なんか変だ……)

ただならぬ空気を感じたジョーラは、2人に近づくかどうかしばらく迷ったが、息子を捜しに来た目的を思い出し一歩踏み出した。

「実はーー」

彼は息子の行方を聞いて、もし知らなければすぐにここを離れようと思っていた。しかし、話し終わる前に男が口を挟んできた。

「何を捜しているか私は知っている、ジョーラ」

「ど、どうして私の名前を?」

自分が何者か名乗っていないのに、ふいに名前を呼ばれて後ずさってしまう。男は自分のそばに来るよう手で合図しながら話を続ける。

「レグニッツがどこにいるか知っている」

(もしかして、さっきあの子が教えたのか?)

なぜ自分の名前や息子を捜していることを知っているのかは気になるところではあるが、背に腹はかえられない。ジョーラはすぐに警戒を解き、男に近づいた。

「息子はどこに?」

「その前にジョーラ。ここがどこだか知っているのか?」

「ここはミールタウンから約200㎞離れたカラスの森でーー」

「違う、ここは魂が帰る場所、迷魂の地だ」

ジョーラは男の言うことが理解できなかった。いくら記憶が曖昧だからといって自分がどこにいるか間違えるはずがない。しかし、それでも息子の行方を聞き出すため、彼は気持ちを落ち着かせながら言った。

「迷魂の地? 聞いたことがないな」

「ここは迷える魂が集う場所。人間は誰もが長生きすることを望む。そして中にはそれを望むあまり、自分の死を受け入れられず、魂になった後も自分が死んだことを忘れてしまうことがある。彼らは自身が認めたくないことは忘れてしまうのだ。そんな迷える魂がたどり着く場所はただ一つ。生前の未練が投映される、生と死の世界の狭間……迷魂の地だ。本来ならばここは、魂同士は隔離されるが、一瞬だけ触れ合う時がいくつか存在する」

男が篝火に薪を加えると、さっきまでパチパチと静かに燃えていた炎がその勢いを増した。

「死の神アンナが封印されて以来、この世界の死の法則が乱れ始めている。迷魂の地もまさにその乱れから生まれた産物と言えるだろう。このような無秩序の中で、迷える魂達は投映されたこの地にいつまでも留まり、輪廻を繰り返している。自分の死を受け入れない限り、彼らは永遠の時をこの霧の中でさまようのだ」

「な、なぜ私にそのようなことを?」

男は聞いてもいない話をなぜ自分に聞かせるのだろうか。ジョーラはひどく混乱した。しかし、男は彼の質問には答えず、ただ見つめていて……。

「まさか……そ、そんな、ありえない!」

ジョーラはやっと男の言う意味を理解したが、その事実を認めたくなかった。そう……『認めたくない』のだ。

「これは事実だ。ここへ来るまで不思議な現象が起きただろう? 見覚えのある道、なぜか懐かしいと感じる人影。生前の出来事が、薄っすらと記憶のどこかに残っているがゆえの現象だ」

この男の言うとおり、たしかにここに来るまで見た光景は懐かしく感じていた。ジョーラは言葉を失った。ガンガンと頭の中で警鐘が鳴り響く。渇き切った喉から嫌な呼吸音が聞こえるも、ジョーラは力を振り絞って声を出した。

「もし私が死んでいるとしたら、私はどうやって死んだ?」

「あなたは野盗に殺されたのよ」

横にいた女がため息混じりで答える。

「でもあなたは息子に対する未練が残っていて、自分が死んだことを認めようとしなかった」

「それじゃレグニッツは……私の息子は無事なのか?」

自分の死よりも、息子の安否のほうが心配だったジョーラは、すがるように女に問いかけると……。

「あの子はその場から逃げ、生き延びたわ」

ジョーラはレグニッツの無事を確認できて、安堵する。ほっとしたのも束の間、ジョーラは男が先ほど言っていたことを思い出し、しばらく考え込んだ。

「あんたたちがさっき言っていた、『輪廻を繰り返す』って私は……どれぐらい繰り返している?」

「今回で34回目だ。今宵は迷魂の地に魂が帰ってくる日。毎年この日の夜に、魂の輪廻がおこなわれる。お前は33年前、野盗に殺されてから、毎年この日を迎えている」

「33年……?」

男が口にした果てしない年月を聞いて、ジョーラは愕然とした。かつては仕事で息子の少年時代を一緒に過ごしてやることができず、やっと一緒にいられるかと思ったら、今度は33年もこの場所でさまよい続けていたなんて……。レグニッツは私のいない人生を、一体どのような気持ちで過ごしてきたんだろうか。

「それじゃレグニッツは……。あれからどうなったんだ?」

「彼はあなたの跡を継いで商人になったわ。今ではブライト王国で一番大金持ちの大商人よ」

「そう、か……。ああ……分かっていた。あの子はきっと立派な商人になれると……」

自分がきっちり教えなくても、レグニッツは必ずいい仕事をすると思っていた。ジョーラは涙ぐみながら誇らしげに話す。

「あんたたちはどうして私にこのことを教えてくれるんだ?」

「あなたを助けるため」

「お前をここから解放させるためだ」

女と男がほぼ同時に答えたあと、男はジョーラをじっと見つめる。それまで感情もなく淡々と話してきた男の瞳がなぜか悲しみで揺れているように見えた。

「どうやって私を助けるのだ?」

「彼を見つけてやろう」

男が立ち上がると、いつの間にかその手には大きな鎌が握られていた。そして鎌を持ち上げ、霧に向かって大きく振り下ろした直後、裂け目ができたのだ。その空間の向こう側には、ジョーラのように霧の中で迷子になっている中年の男が立っていた。その男は豪華な服を着ていて、とても気品があるようだったが、何かを捜すようにキョロキョロと辺りを見渡している。気づけば、その裂け目はだんだんと大きくなり、ジョーラ側の空間と一つに融合しようとしていた。やがて空間が一つになると、中年の男はこちらに気づき……。

「どうも、こんばんは。まさかこんなところに人がいるとは……。実は私、2人の子どもを捜していまして。ひとりはアンジェロ、もうひとりはロワンといいます。ふたりとも今、家を出ているのですが、託したい重要な事があるんですよ」

「レ……レグニッツ?」

一目見て、目の前の人物が息子だということに気づいた。既にだいぶ老けた顔つきになっていたが、それでも若い時の面影はまだ残っている。

「……どちら様でしょうか?」

「レグニッツ、我が息子よ。私は……私は……」

彼はそれ以上言葉にできなかった。レグニッツはジョーラの顔を食い入るように見ると、はっと息をのんで驚きの声で言った。

「ちっ、父上!?」

「そうだ、我が息子よ」

「ど、どうしてここに……? あなたは……すでに……これは一体!?」

レグニッツは驚きを隠せなかった。しかしそれはジョーラも同じ。レグニッツがここにいるということは、自分と同じ運命を辿ったということ……。ジョーラは男と女に懇願する。

「彼はまだ若い! ここに来るべき人じゃない。頼む、レグニッツを助けてやってくれ! お願いだ!」

「彼の命はすでに尽きている。これだけはどうすることもできないわ」

「……一体どういうことだ? ここはどこだ? あなた達は誰なんだ?」

混乱しているレグニッツは、同じ質問を繰り返すばかりだった。

「レグニッツ……」

ジョーラは息子に真実を伝えようとするが、なかなか口にできない。すると、男が彼に代わって答えた。

「レグニッツ、お前は2ヶ月前に死んでいるのだ。ここは迷魂の地、魂がさまよう場所だ」

「何を言っている? 死んだだと……? そんなことはありえない! 私は昨日、財務大臣とお茶を飲んでいたんだ! それが……2ヶ月前に死んでいるなんて!」

男はもう一度、レグニッツに告げる。淡々と話すその様子から、こういうことには慣れているようだった。レグニッツが膝から崩れ落ちると、枯れた声でポツリポツリと話し出す。

「私の商会には、まだ私が処理すべきことがたくさん残っている……。それにロワンはまだ幼い。一人前になるにはまだ時間がかかるんだ……。アンジェロにはまだ伝えてないこともある。私はあいつの事をいつも誇りに思っていた。だから、望んでいる道を歩んで欲しいと伝えなければならない……。私は彼らを捜さなければならない使命がある! まだやり残したことがたくさんあるんだ! 死ぬわけにはいかないんだよ!」

必死になって叫ぶレグニッツを見て、ジョーラは男の言葉を思い出した。自分の死を受け入れず、未練を残している者は、ここで永遠に同じことを繰り返し、解放されない。

「聞いてくれ、レグニッツ」

レグニッツに自分と同じ思いをさせまいと、真剣な眼差しを向けながらジョーラは話し始める。

「全てを受け入れよう。子どもたちは、お前がいなくてもきっとうまくやっていける。だからもう手放してやりなさい。ここからは私がお前と一緒に歩んでいくから」

彼はレグニッツの肩にそっと手を乗せる。すると、肩が小刻みに震え始めて……。

「どうしたんだ、レグニーー」

言い終わる前に、ジョーラははっと気づく。レグニッツの瞳には、悔しさで溢れた涙が溜まっていたのだ。

「すみません、父上……。あの時、私が逃げずに父上を助けていたら、こんなことには……っ!!!」

地面に腕を叩きつけ、レグニッツは泣き崩れた。

「お前のせいじゃない。あの時はあれが一番の選択肢だったんだ。さあ、一緒に最後の旅に出よう」

レグニッツはまだ未練を断ち切れないのか、しばらくその場に留まっていた。しかし、瞳から零れ落ちる涙もおさまると、父親を見ながら小さくうなずく。そして2人はそのまま霧の中へと消えていった。

「ねえ、あのおじさんとおじさんの子ども、一緒になれたかな?」

男の子は枯れ木の後ろから顔を出しながら聞いた。

「2人は一緒になれたんだ、ダイモン」

男は静かに答える。

「よかったね! キキ、あの2人一緒になれたよ! 僕とお父さんみたいに!」

男の子は人形を嬉しそうに抱き上げる。

「僕たちもお家に帰ろう! お父さん、お母さん」

男の子はピョンピョン跳ねながら霧の向こうへと走っていった。篝火を消した男と女は、男の子の後を追うように、ゆっくりと霧の中へと消えていったのだったーー

ドリーのコーナー

生前は人助けを良くしていたが、極端な悲観主義者で、グレイヴボーンになった後はよりひどくなっている。

専用装備の説明

奇妙な色をしたエメラルドのオーブ。

シェミーラの悲しみから生まれた怨霊が宿っており、無意識のうちにオーブの放つ悲しみに支配されてしまう。

スキン

冬・フロストバンシー

ギャラリー

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