呼称 | ・無鉄砲なドジっ子 ・破壊大魔王 ・ピッピ |
種族 | リス亜人 |
年齢 | 11歳 |
身長 | 110㎝ |
趣味 | 変な魔法を使っていたずらすること |
好きなもの | クルミのパイ |
嫌いなもの | キノコ |
故郷 | ユグドラシル |
現在地 | ユグドラシル |
現在の身分 | ・初めて星界学院を退学させられたヴェルディア生徒 ・ドジっ子の天才魔法使い |
関連人物 | 【友人】 【同窓】 |
CV | 河野みさき |
誕生月 | 5月 |
※「HP・攻撃力・防御力」は上限が存在しないため記載しません。
※()内はPVPでのステータス
クリティカル率 | 77.7 |
命中 | 0 |
回避 | 1009.55 |
魔法効力 | 0 |
魔法抑制 | 0 |
速度 | 54.09 |
自動回復 | 0 |
魔法耐性 | 57.8 |
物理耐性 | 18.37 |
吸収力 | 0 |
クリティカル増幅 | 36.66 |
クリティカル耐性 | 5.6 |
洞察 | 0 |
根性 | 3.5 |
治療効果 | 8.86(15.53) |
治癒 | 0 |
攻撃速度 | 0 |
クリティカル回避率 | 9.3 |
防御貫通 | 0 |
魔法貫通 | 10.23 |
熟知 | 0 |
受け流し | 11.35 |
腐食 | 0 |
緩和 | 0 |
ダメージ耐性 | 0 |
シールド効果 | 0 |
SP回復効率 | 0 |
Lv.1 | ランダムでネモラ、アルドン、タシーのうち一人の必殺技の基本効果をものまねで発動し、継続して詠唱する必要がなくなる。 もしチームに3人のうち一人が出陣していたら、優先してその英雄の必殺技のものまねをする。 |
Lv.2 | ランダムでネモラ、アルドン、タシーのうち一人の必殺技のレベル2効果をものまねする。 |
Lv.3 | ランダムでネモラ、アルドン、タシーのうち一人の必殺技のレベル3効果をものまねする。 |
Lv.1 | 継続詠唱スキル。 0.15秒ごとに魔法弾を1発発射し、1発ごとの魔法弾は攻撃力×90%のダメージを与える。 魔法弾を4発発射した後、それ以降発射する魔法弾は1発ごとに失敗率が8%ずつ上昇する。 ミスすると詠唱は中断され、自身はしばらくスタン状態になる。 |
Lv.2 | 25%の確率で黄色の魔法弾を発射し、ダメージを与えるとともにターゲットのSPを70減少させる。 |
Lv.3 | 25%の確率で青色の魔法弾を発射し、ダメージを与えるとともにターゲットに4秒の間、60の減速効果を付与する。 |
Lv.4 | 25%の確率で緑色の魔法弾を発射し、与えたダメージの100%を回復する。 |
Lv.1 | 最も攻撃力の高い敵に攻撃力×270%のダメージを与え、5秒間、ドングリに変化させて攻撃を封じる。 このスキルは25%の確率で失敗し、失敗すると変化効果が自分にかかってしまう。 |
Lv.2 | 自身がドングリに変化している間、追加で100の回避を獲得する。 |
Lv.3 | 自身がドングリに変化している間、追加で200の回避を獲得する。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル30が必要 ミスの確率が10%に減少する。 |
Lv.1 | 最も近くにいる敵をその次に近くにいる敵の頭上に転送させて落下させ、短時間の間ターゲットにスタン効果を付与する。 落下する際に攻撃力×290%の範囲ダメージを与え、範囲内の敵を3秒間スタン効果を付与する。 初めてこのスキルを使用した時、90%の失敗率があり、失敗すると最も近くにいる前列の味方を最も離れた敵の頭上に転移させて落下させる。 味方は落下時、ダメージとスタン効果を受けない。 |
Lv.2 | ピッパーが後列中央に配置された時、このスキルは失敗しない。 |
Lv.3 | 範囲内の敵が受けるスタン継続時間が4秒に増加する。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル60が必要 範囲内の敵が受けるスタン継続時間が5秒に増加する。 |
初期 | 「ピッパーピューピュー」発動中、魔法弾が発射されるたびに40%の確率で追加の魔法弾が生成され、ランダムで敵1体に向けて発射される。 |
+10 | 「ピッパーピューピュー」発動中、魔法弾が発射されるたびに65%の確率で追加の魔法弾が生成され、ランダムで敵1体に向けて発射される。 |
+20 | 「ピッパー大転送」で転送された味方は落下後5秒間、全てのダメージが無効化される。 |
+30 | 累計で2回「ピッパー大変化」を使うと、このスキルは失敗しなくなり、攻撃力が最も高い敵2体をターゲットにするようになる。 |
+40 | 「ピッパー大転送」で転送された味方は落下後6秒間、全てのダメージが無効化される。 |
3/9 | 2回目及びそれ以降必殺技を使用した時、必ず1回目と同じ必殺技が発動し、さらにその効果が改良される。 ネモラのものまね時、治療効果の上限を超えた部分は自身のシールドとして転換され12秒継続する。 アルドンのものまね時、落雷が近くの敵に移り、1.5秒間スタンさせる。 タシーのものまね時、敵は眠っている間、0.5秒ごとにSPを20失う。 |
9/9 | 戦場の英雄が必殺技を使うたびにピッパーは80のSPを獲得し、さらに攻撃力が永久に10%上昇する。 攻撃力上昇効果は最大12スタックまで可能になる。 |
【ゲーム内説明】 ヴェルディア連盟のメイジ英雄。 多くのスキル効果がランダム性を持ち、一部英雄の必殺技をものまねで発動することもできる。 |
登場時 | 今度はきっとうまくいく! |
移動時 | あらら、また遅刻しちゃった! |
通常攻撃 | シュッ! |
スキル1 | シュッ!シュッ!シュッ! |
スキル2 | ドングリになって頭を冷やして! |
スキル3 | あわわ!近すぎるよ! |
必殺技 | うーん、ちょっと待って…これに決めた! |
勝利時 | ピッパー作戦大成功! |
神話時 | ピッパー?ああ、思い出したわ。よく授業をメチャクチャにしていたおてんば娘の事だね!彼女はどんな魔法も操れる本物の天才だったわ! |
旅館 | ドングリ食べる?いいよ!どうやらあんまり好きじゃないみたいだね。それじゃこれあげる! |
※未実装
星界学院とはーー
ブライト王国の最高権威を持つ魔法学院であると同時に、ヴェルディア連盟と合同で魔法研究を行っている王国有数の学術機構でもある。ブライト王国の人間の魔導士たちは星界魔法、ルーン魔法に長けていて、ユグドラシル出身のヴェルディア連盟の者は自然魔法に精通しているため、それぞれの長短を補い合っていた。しかし、ヴェルディア連盟の者達は、外界とあまり関わりを持たないため、王国との合同研究にはあまり積極的ではなかった。とはいえ、王国の最高権威を持つ機関と合同研究をおこなっている建前上、いざこざを起こすわけにもいかず、生徒を定期的に派遣だけはしていたのだったーー
星界学院は風紀がとても厳しく、学院のルールに従わない生徒には厳しく取り締まっていた。それでも従わない生徒は、問答無用で『追放』になる。記憶に新しいのは、いつも勝手に動き、火遊びが好きな女魔導士。彼女は学院から追放されたうちのひとりである。
星界学院にやってくるヴェルディ連盟の生徒のほとんどは、みんな優秀で、学院の環境にも慣れ親しみ、問題を起こさない。
だが……ピッパーだけは例外だったーー
『寝ぼけ顔』、『ドジっ子』、『破壊大魔王』これらは全てピッパーが学院で呼ばれていたニックネームである。彼女は星界学院からユグドラシルに強制送還された唯一のヴェルディア連盟の者……。その理由も呆れて物が言えないほどだったーー
他人の目から見たピッパーは、いつも寝ぼけ眼で、半分夢の中にいるのではないかと思うほどぼんやりしていた。しかし、魔法に対してだけは貪欲で、類稀な才能を持っていた。多くの魔導士たちが一生をかけて1つの分野の魔法を習得するのに対し、ピッパーは全分野の魔法に精通していて、様々な魔法をマスターしていたのだ。彼女は全く知らない魔法でも、他人が唱える姿を一目見るだけで、それを真似して発動することができる。ただ、彼女自身どうやってそれをなし得ているのかはわかっていない。もちろん魔法を唱えることができても、それを完璧に制御しているとは言えないのはここだけの話である……。
ピッパーはよく自分だけの世界に浸っていた。何よりも魔法の研究を優先する彼女は、どんなに危険なものだろうと実験する癖がある。そのため、授業中であっても、気になった魔法があるとすぐ手を出し、教室中をめちゃくちゃにしていて、学院の先生達は手を焼いていた。彼女の思考パターンは、他人とはまったく異なるもので、誰もが彼女の行動を予測することができなかった。そのため、ピッパーをよく知らない生徒からは、失敗ばかりする才能がない奴と言われている。
天才のする行動は、常人に理解できないというのはよくあることだ。とある魔法理論の授業で、どうしてテレポート魔法を勉強するのかと先生に問われたピッパーは……。
「ドングリを運ぶのに便利だから」
真面目な顔をして答えるのだが、先生は顔を真っ赤にして怒っていたという。
あの、問題児であり、同じく追放されたミレイルに彼女のことを聞くと……。
「ピッパー? ああ、思い出したわ。よく授業をメチャクチャにしていたおてんば娘のことね! 彼女はどんな魔法も操れる、本物の天才だったわ!」
『授業をめちゃくちゃに』というのは、ミレイルにだけは言われたくなかったであろう。
ピッパーは学院から追放され、ユグドラシルに戻った。誰も彼女を咎めることのない自由の身となったのだ。ユグドラシルは束縛がない自由気ままな世界……。そこにはピッパーの仲間達がたくさんいた。優しいヤギや温厚な羊達、色鮮やかな蝶……。そして、ピッパーのいたずら仲間であるラーク。彼女はこうした仲間達と遊び、好きな魔法を自由に研究することが退屈な授業よりもずっと楽しかったのだったーー
『エスペリア童話選集』
ーー無垢の冒険ーー
このおとぎ話を読んだ人なら、多かれ少なかれこんな伝説を聞いたことがあると思う……。この世には、生命を司る神デューラが愛した金色のベリーが存在する。それはエルフの羽根のように輝く葉がついていて、黄金の真珠のような不思議な実がなる果実だ。それを食べた人は、願い事を1つだけ叶えることができる。だが……この果実は純粋な心を持つ者だけが見つけることができるのだ。これから語る物語は、この伝説の金色のベリーと深く関係しているーー
橙色の空が完全に藍色に染まり、夜になってしまったとアモスは気づきました。月がひっそりと姿を現し、静かな夜が訪れました。鳥の歌声や楽しそうに笑う草木のさざめきが聞こえる昼間の森は、女神デューラの祝福を受けていますが、日が落ちるとその賑やかさがなくなり、未知なる神秘を見せるのです。アモスは簡単にたいまつを作り、森の暗闇に怯えながらも森の中を進んでいきます。ここに来た時の道を戻っているだけなのに、森に立ち込めている霧のせいで、どんどん道に迷っているような気がしてきました。
「はぁ……しょうがない」
足を止めたアモスは、ふと木々の葉が覆う空を見上げ、昼間にお父さんと喧嘩したことを思い出しましたーー
「すでにこの件のことは話が終わっているはずだが? どういうことなのか説明しろ、アモス」
「だ、だって……」
「この森は危険だから遊ぶなと何度同じことを言わせれば気が済むんだ! 森の中が危険なことぐらいわかっているだろう! 何が楽しくて森で遊ぶんだ!?」
森の中にいるアモスを必死に探し、ものすごく怒りながら家まで連れ帰ったお父さんの言葉でした。
「遊んでるとかじゃなくて……」
「私のアモスよ。お願い、もうお父さんを心配させないで」
「お母さん……」
病気を患い、ベッドに横になりながら涙目で訴えるのはアモスのお母さんです。
「でも金色のベリーを見つけることができたらーー」
「アモス! その話は済んだと言っただろう!」
お父さんは薬のお椀を机に叩きつけて、声を荒げながらアモスの言葉を遮りました。
「いいか? もう二度とあの森には入るな!」
ーー遠くから聞こえる獣の声に、アモスは現実に引き戻されます。お父さんの言うことを聞かず、ひとりで迷路のような森に入ったことを後悔し始めました。森の暗闇でだんだんと心細くなってきたアモスは、嫌な想像をしてしまいます。気を抜けば、すぐにでも背後から闇に引きずり込もうとする獣が森には潜んでいて、その機会をじっと待つようにアモスを暗い森の中から見つめている……そんなことを考えるようになってしまいました。考えれば考えるほど恐怖に支配され、居ても立っても居られなくなったアモスは、慌てて木の穴に飛び込みました。そこには『ナッツシェル』という文字が刻まれていました。穴の奥は暖かく、さっきまでとは別世界のようでした。ふかふかの干し草、採れたての新鮮な果物、それに見たこともない大きなどんぐり。一日中森の中を歩き回り、疲れ果ててお腹もペコペコだったアモスは、目の前の誘惑に勝てませんでした。胸の前で手を合わせて、聖なる光に許しを請い、果実をひとつふたつと口の中に入れました。お腹が満たされたアモスは、だんだんと睡魔が襲ってきて、気づけばふかふかの干し草の上で眠りについてしまったのですーー
「ねぇ、ラーク。夜中に私をこんな場所に連れてきた理由って……まさかこの人間のガキンチョを見せつけるためなの?」
「ち、違う、違うよ! 見せたかったのは、こっち! どんぐり! ピッピの誕生日に渡そうと思って、幻夜の森で必死に探したんだぜ~」
話し声が聞こえてきて目を覚ましたアモス。うとうとしながら目を開けると、目の前には2つの毛むくじゃらが!
「わっ!?」
思わず声を上げると、気づいた2つの毛むくじゃらが振り向きました。
「あわわっ、起きた! ねぇ、人間のガキンチョ。なんでラークの家にいるの?」
よく見れば毛むくじゃらの1つは、リスでした。そのリスが大きなぐるぐるメガネをくいっと直しながらアモスに聞きます。
(うう、まさかこの家の持ち主に見つかっちゃうなんて……)
逃げられないアモスは正直に話しました。
「森で……迷子になって。ここは暖かくて居心地よかったから、つい……」
「えっ、本当!? ねぇ、ピッピ聞いた!? ピッピ以外に褒められたの初めてだよ!」
もう1つの毛むくじゃらは、ラークと呼ばれたアライグマでした。なんだか照れくさそうに頭を掻いて、喜んでいます。
「そういうことなら、ここでゆっくり寝ていきなよ! 朝になったらピッピとボクが家まで送ってあげるぜ~!」
「それはダメだよ!」
ラークの言葉にアモスは慌てて起き上がりました。
「だって……ベリーがまだ見つかってないんだもん」
「ベリー?」
ラークとピッピは、顔を見合わせながら頭をかしげました。
「ベリーが欲しいなら、たくさん持ってるよ」
ラークは持ち歩いている缶を取り出して、蓋を開けました。中には赤や青の美味しそうなベリーがたくさんありました。だけど、アモスは頭をぶんぶん振ります。
「違う、それじゃない。金色で、キラキラしていて、昔デューラ様が愛したベリーだよ!」
ピッピはうーんと考えて、あっと気づきました。
「わかった! 伝説のベリーを探しているんだね!」
「で、伝説のベリー!?」
ラークは今にもヨダレがたれそうなくらい食いつきました。
「おいしそう! すぐに探しに行こうよ!」
「あわわ、待ってラーク! 伝説のベリーはね、純粋な心の持ち主にしか見つからないベリーなんだよ。しかもね、このベリーを手に入れるには、神様が残した試練に合格しなきゃいけないの」
「へっへ~ん! 大丈夫! ボクならどんな試練だって絶対に合格しちゃうもんね~!」
ラークは自信満々に自分の胸をどんっと叩きました。
「うーん……でも、何があるかわからないし」
ピッピは頭を抱えて悩みます。だけど、ぱっと顔を上げて言いました。
「……わかった。ラークが言うなら行こう! ねぇ、人間のガキンチョ! その伝説のベリーの場所知ってるんでしょ? 早く連れてって!」
「えっ……あの、実は……僕もわからなくて……で、でもデューラ様が好きな場所に行けばあるかなって! デューラ様なら自分の好きな場所に好きな果物を植えると思うし! だからきっとユグドラシルにあるはず! あと……僕の名前はアモス。ガキンチョって呼ばないで。お父さんの畑仕事の手伝いだってできるし、お母さんに薬をあげることだってできるんだから!」
「わかったよ、アモス! ボクはラーク。こっちはボクの友達のピッパー。このユグドラシルには、ボクとピッパーの知らない場所はないんだぜ~! 伝説のベリーがこの森にあるなら、絶対見つかるよ!」
こうして……アモスはラークとピッパーと一緒に森の東から西へと歩いていきました。森には不思議なものがいっぱいで、アモスは目をキラキラさせながらラークたちに着いていきました。ヤドリギに覆われたオークの木や、眠りから起こされて怒っているオークの賢者。草むらから飛び出してきた、ヴェルディア連盟のエリート武装集団『ヴィジランツ』。ボルトベアードに乗ったファントムライダー。アモスたちは蛍に導かれて、川辺にやってきました。キラキラと光る川にアモスは大喜び。この輝く川の底には、なんと光っている石があったのです。アモスたちは水切り競争を楽しみました。目的地に向かう途中、ラークとピッパーはアモスにこれまでの冒険のことを話します。アモスはとっても羨ましそうでした。特に、ピッパーがこれから星界学院に交換留学生として行く話は興味津々のようです。
「ピッパーはすごいね! 星界学院で学ぶことができるなんて」
「アモスも行きたいの? なら一緒に行こう!」
ピッパーは被っている大きな帽子をつかみ、ぎゅっと整えました。
「アルドンのお爺さんに頼めば、きっと許可してくれるんじゃないかなぁ」
ピッパーのお誘いに少し嬉しい気持ちになるけれど、アモスは戸惑いました。
「……やっぱりいいよ。僕、魔法わかんないもん」
「大丈夫! ボクも魔法は得意じゃないよ! 木に登ったり、どんぐりを採ったりすればいいんだ!」
ラークはふふんっと得意げに胸を張りました。だけど、アモスは首を横に振ります。
「僕、木登りは得意じゃないし、どんぐりがどこに生えているのかわからないよ」
「ふーん、そうなんだ? じゃあさ、アモスは何が得意なの?」
疑問に思ったラークはアモスに聞きました。
「お父さんが言うには、僕はお父さんを怒らせることが得意みたい」
アモスは真剣に言いました。
「僕ね……お父さんの仕事を手伝ったり、お母さんが薬飲むのを手伝ったりしてるんだ。だけど、ほかの家の子は、学校で勉強したり村でおとなしく遊んだりしてるんだって。だから、僕は子どもらしくないってよく言われるんだ。今日だって僕が伝説の……金色のベリーを探してるって言ったら、森には入るなって怒るし……」
「えー! それはひどいよ! 大人の手伝いするなんて偉いのになんでやっちゃダメなんだ? 人間の大人って、やっぱり閉じ込めるの好きなんだね! 変なルールも作っちゃうし! 大人って本当わかんないなー! ルールに縛られて何が楽しいんだよ?」
ラークはぷんぷん怒りながら言いました。
「アモス、キミはボクよりすごいよ」
初めて褒められたアモスは、少し恥ずかしそうに頭を掻きました。
「自分の価値を決めるのは自分だからね」
ピッパーもどうやら不満そうでした。
「みんな、ラークのことをいたずらっ子って言って遊びたがらないけど、私はラークと一緒にいると面白いからよく遊んでるの。だって、ラークがいなかったら、夜の幻夜の森に行くことなかったもん! すっごくきれいなんだよ!」
「あっ!! そうだ、幻夜の森!」
ラークは思い出したようにはっとして、アモスの肩を嬉しそうにたたきました。
「アモス、幻夜の森にまだ行ってなかったね! 実は、ピッピにプレゼントした大きなどんぐりも幻夜の森で見つけたんだぜ~! そこには空に浮かぶデッカいキノコとか、人間よりもデッカい花とか! ほかにも美味しい果物もたーくさんあるんだよ!」
ラークの話を聞いたアモスは、とってもワクワクしてきました。
「そうなんだ……! すごい! もしかしたら金色のベリーはその森にあるかもしれないね!」
楽しそうにうんうんとうなずいて、アモスたちは幻夜の森に向けて出発しました。七色のレースのようなカーテンをくぐり抜けて幻夜の森に入ると、アモスはわぁっとため息をつきました。ラークが言ったことは、大げさでもなんでもなく、本当にきれいな世界が広がっていたのです。まるで星屑が夜空から落ちてきたように、キラキラとした光が降り注ぎ、ぼんやりとした光の霧が森の中を漂っていました。輝く胞子を纏った巨大なキノコが空に浮き、人間よりも大きな花は、色とりどりの花びらをつけていて、夜風が揺らしていました。それだけではありません。淡い光を放ちながら自由に飛び回る精霊たちもいるのです。
「ジャミー!」
精霊たちに向かってラークとピッパーはジャミーと呼びました。どうやら精霊たちはいろいろな種類のベリーからジャムを作ることができるみたいです。だけど、臆病な性格のジャミーは、アモスたちと目が合ったすぐあと、逃げ去ってしまいました。
「ここの果物って本当においしい! でも、もう食べられないよ~」
ラークはごろんと仰向けに寝転がって、パンパンに膨れ上がったお腹をなでています。
「ラーク……。幻夜の森に生えてる果物なのに、食べちゃうの……?」
ピッパーは心配そうに言いながらメガネをくいっと直しました。
「いつも食べてるから平気だよ」
だけどラークはどこ吹く風。
「はぁ……何も起こらないといいなぁ」
お腹いっぱいだと言っていたのに、ラークの手には果物がありました。
「あれれ? そういえばアモスは……」
姿を探そうとピッパーは振り返りました。すると、そこには口の周りにたくさんの果汁がついたアモスがいたのです。
「もうっ……」
ピッパーはやれやれと呆れています。
「えへへ~」
誤魔化すように笑ってみせたけれど、ピッパーに機嫌を直してもらおうと慌てて大きな木に向かって走りました。そこには輝く提灯のような果実が実っていました。ピッパーに渡そうと手を伸ばしたその時です。
「あ~~~~!!! ピッピ!!! アモス!!! ちょっとこっちに来て~~!!」
アモスとピッパーがラークのもとに駆け寄ります。すると、その大きな木には、探していた伝説の金色のベリーが生えていたのです! エルフの羽根のような丸い実……。生命を司る神デューラが愛したと言われる伝説のベリーに間違いありません。
「あ……こ、これが……!」
「アモス! 早く採って! これが欲しかったんでしょ!?」
「慎重にね……」
湧きあがる気持ちを抑えきれないアモス。ラークとピッパーにせかされながらも、恐る恐る金色のベリーを摘みました。だけど、その瞬間……。まるで古代の生物が蘇ったかのように大地が激しく揺れ出したのです。地面に大きな亀裂が入り、3人は引き離されてしまいました。
「あわわっ!」
バランスを崩したピッパーが地面の割れ目に落ちそうになって、ラークが慌てて手を伸ばします。間一髪、ピッパーを助けることができましたが、ラークたちは勢い余って金色の大きな木のほうへと転がっていきました。
「ラーク! ピッパー! 大丈夫!?」
みるみる遠ざかる2人に向かってアモスは金色のベリーを手に持ったまま、大声で叫びます。だけど、それに応えたのは、ラークたちではなく聞き慣れない老いた声だったのです。
「この地に足を踏み入れる者が現れるのは、久方ぶりじゃ。人間の子よ……お主がこの聖なる実を手にしたのか?」
アモスは少し怯えましたが、迷いながらも頷きました。
(声しか聞こえない……もしかしたら、僕が見えてないだけかも)
アモスは相手にちゃんと伝わるように大きな声で答えました。
「はい……! 僕が金色のベリーを摘みました!」
「ひとつだけでいいのかね? ベリーはたくさんある。欲しい分だけ持っていっていいんじゃよ」
アモスはぶんぶんと頭を横に振りました。
「僕は願い事がひとつしかありません。お母さんが、健康になってくれることです。なので、ベリーはひとつで十分です」
「ふむ……人間の子よ。金色のベリーを持って帰るには、代償が必要なことは知っていたかね? 知らなかったということであれば、許してやろう。じゃが、そうでないのであれば……そのベリーはここに置いていくのじゃ」
「えっ……」
代償が必要なことを知らなかったアモスはとても迷いました。だけど、アモスには絶対に叶えたい願いがあります。金色のベリーをぎゅっと胸に抱いて、その声に向かってはっきりと言いました。
「金色のベリーを持ち帰らせてください! 代償なら、なんでもあげます!」
「なるほど……では友達のどちらかをもらうとしよう」
「え!?」
アモスが驚いている間に、いつの間にかラークとピッパーが光る丸い球の中に閉じ込められて、ぷかぷかと浮いていたのです。
「さあ、選べ、人間の子よ。どの友をここに残して行くのじゃ?」
「そ、そんな……」
アモスはお母さんの病気を治す金色のベリーを手に入れるために、何かを失うことがあるかもしれないと覚悟はしていました。もしかしたら森から出られないかもしれないと……。でも、その『代償』が友達だとは思わなかったのです。ラークとピッパーはまだ知り合ったばかり。でも、アモスの言葉を信じて、一緒に冒険をしてくれた2人は、もうアモスにとっては特別な友達なのです。
(お母さんを治すベリーはここにある。でも……その代償がラークたちだなんて……)
アモスの両方の目には涙が溜まり、今にも溢れそうです。
「ボクを選んで!」
球体の中のラークが、声を上げました。
「アモスはボクが出会った中で、一番優しい人間だった。ピッピはボクの一番の友達! どうせボクは迷惑をかけることしかできないからさ! でもピッピは違う。ピッピは星界学院にいけるくらいの天才なんだ! だからボクを選べばいいんだよ!」
「ちょ、ちょっと! それはダメだよ!」
ピッパーは無意識にメガネをかけ直して、叫びました。
「ラークはユグドラシルで一番面白い友達! ラークと一緒に遊ぶのは、すごく楽しいんだから!」
ピッパーの言葉を聞いたラークはとても喜んでいました。だけど、難しい選択を迫られていることに変わりはありません。アモスがラークを選んでも、ピッパーを選んでも、どちらにしてもピッパーとラークは離れ離れになります。ラークは真剣に考えて、アモスに向かって叫びました。
「ねえ、アモス! 金色のベリーを2つ持ってってよ! それで、ボクとピッピ両方ここに残して!」
「え……? 何、言ってるの……?」
「お母さんを助けたいんでしょ? だったら金色のベリーは持って帰らなきゃ! 大丈夫! ボクはピッピと一緒だからさ!」
笑顔で言うラークですが、その瞳には涙がたくさん溜まっていました。アモスはラークの一言で、どうやら決心がついたようです。
「ーーもう金色のベリーはいらない! ピッパーとラークを返して!」
「ほう?」
謎の声の主は驚いているようでした。
「人間の子よ、母親の病気は治したくないのかい?」
「治したいです! でも……こんな代償で……友達を置いて金色のベリーを手に入れても、お母さんは喜んでくれません!」
「ハッハッハ。素晴らしいのう……久方ぶりにこの地にやってきた人間の子よ……そしてこの試練に合格したたったひとりの人間の子よ……」
神秘的で威厳のある大きな笑い声が、アモスたちの耳元で響きました。もう一度笑い声が聞こえたかと思えば、その声は消えていったのです。そして、アモスの手にあった金色のベリーも一緒に消えていきました。消えていくベリーを見つめながら、アモスは悲しそうにため息をつきましたーー
「ーース! アモス! 目を覚まして……アモス!」
「わっ!?」
アモスはびっくりして勢いよく起き上がります。アモスの隣には心配そうに見つめるピッパーの姿がありました。
「ふぅ……よかったぁ」
ピッパーは一安心。だけど、反対側ではラークがまだ眠っているようでした。
「うわああぁ! ピッピ! 逃げて!」
「え……?」
ラークは眠りながら手足をジタバタさせて叫んでいます。何が起こっているのか、アモスはまったくわかりませんでした。その時、ピッパーはアモスが手に持っている果実に気づきます。
「あ……それは……。眠りのベリーだね。間違って採って食べちゃったんだよ。それを食べたら、いつの間にか眠っちゃうんだ」
アモスは自分の手の中にある灰色のベリーに気がつきました。
(なんだ……夢だったんだ……)
ガッカリしたその時。そのベリーから新しい葉っぱが生えてきたのです! その葉っぱはエルフの羽根のように輝いていて、金色の真珠のような丸い実がついていました。
「これはーー金色のベリー!」
目を丸くして見ていたピッパーが、突然アモスの手を取ってくるくると回りだしました。
「やっぱりそうだったんだ! 伝説の金色のベリーは、純粋な心の力、想いによって形を変えられるものだったんだ……! キミが持っている金色のベリーがその証拠だよ! これはキミの願いそのものなんだ!」
「えーと……ピッパーが言っていた神様の試練っていうのが、さっき見てた夢で……それを乗り越えたから、金色のベリーを手に入れられた……ってこと?」
ピッパーが言っていることがよくわからないアモスは、目をぱちぱちさせて聞きました。
「そういうこと~!」
「……そっか、そうなんだ! あはは、やった!!」
なにはともあれ、金色のベリーを手に入れることができたアモスは、ピッパーと一緒に踊り出しました。アモスの手の中にある伝説の金色のベリーは、優しくて温かい光を放っていましたーー
物語はここで終わりだ……だが、皆さんにはどうしてもその後の展開を知ってほしい。
その後ーー
アモスたちはジャミーたちに感謝の言葉と別れを告げた。ヴェルディアの民のふたりは、アモスをユグドラシルの森の中から安全に送り出した。彼らの別れはあまり悲しいものではなかったようだ。リスの言葉を借りると……。
「森の中を散歩していると、いろんな果物を手に入れられるんだ。だけど、手のひらには限界があるでしょ。欲しい果物を手に入れるには、何かを置いていかなきゃいけないの。でも、一番大切なのは置いてっちゃダメ。それはね、純粋な心。これだけは、なにがなんでも失っちゃダメだからね!」
人生もそうかもしれない。ヴェルディアの民と別れたあと、少年は金色のベリーを持ち帰った。少年の父親は、少年の姿を確認すると、ぎゅっと抱きしめた。2人はお互いに昼間言い過ぎたことを謝った。少年の母親は、2人に勧められて金色のベリーを口の中に入れる。そして、願いをひとつしたらしい。どのような願いだったのかはわからない。だが、その家族はいつまでも幸せに暮らしましたとさーー
天然、お茶目な天才魔女で、魔法の習得や理解が一般人と異なるため、常識を超えた方法で魔法を使おうとすることが多い。自由奔放な生活が大好きで、ラークと共に過ごした時間は最高に幸せな思い出だと思っている。
他人の目を気にせず、自分の世界にのめり込み、未知の魔法に興味を持っている。
ユグドラシルに生えている蒼翠の木から生えた魔法の枝で、枝には純粋な魔法が眠っており、ヴェルディアの血を引く者のみがそれを使うことができる。
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