※「HP・攻撃力・防御力」は上限が存在しないため記載しません。
クリティカル率 | 27.5 |
命中 | 1066.02 |
回避 | 210 |
魔法効力 | 0 |
魔法抑制 | 0 |
速度 | 39.4 |
自動回復 | 0 |
魔法耐性 | 34.24 |
物理耐性 | 63.64 |
吸収力 | 0 |
クリティカル増幅 | 0 |
クリティカル耐性 | 16.9 |
洞察 | 0 |
根性 | 35.76 |
治療効果 | 0 |
治癒 | 9.51 |
攻撃速度 | 0 |
クリティカル回避率 | 27.09 |
防御貫通 | 8.11 |
魔法貫通 | 0 |
熟知 | 0 |
受け流し | 0 |
腐食 | 0 |
緩和 | 14.57 |
ダメージ耐性 | 0 |
シールド効果 | 0 |
SP回復効率 | 0 |
Lv.1 | 敵全体に攻撃力×260%のダメージを与える。 もしスキル「ソウルドレイン」が使えるようになると、最大HPが最も高い2体の敵に「ソウルドレイン」をかける。 シールドが存在している期間中、味方が受けるダメージの35%を代わりに引き受けるが、代わりに引き受けたダメージによって戦闘不能にならない。 |
Lv.2 | 「ソウルドレイン」をかける敵の数が3体になる。 |
Lv.3 | ダメージが攻撃力×300%に増加。 |
Lv.1 | 最大HPが最も高い敵に対して最大HPの18%分HPを吸収するが、この攻撃によって敵を倒すことはできない。 吸い取ったHPは自身のシールドとして転換させ、このシールドは5秒継続する。 シールドは終了時に残りのシールド値をHPに転換して吸収した敵に返す。 |
Lv.2 | 吸収するHPが最大HPの20%分に上昇する。 |
Lv.3 | 吸収するHPが最大HPの23%分に上昇する。 |
Lv.4 | 吸収するHPが最大HPの26%分に上昇する。 |
Lv.1 | 前方の敵に攻撃力×200%の3段ダメージを与え、最後の一撃は3秒継続するスタン効果を与える。 |
Lv.2 | スティッキは9秒ごとに9秒前に与えたダメージの100%をダイモンのHPに転換させる。 |
Lv.3 | スティッキは9秒ごとに9秒前に与えたダメージの150%をダイモンのHPに転換させる。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル30が必要 スティッキの敵に与える3段ダメージが攻撃力×220%に増加する。 |
Lv.1 | 近くの敵1名に攻撃力×250%のダメージを与える。 同時に自身も攻撃力×120%のダメージを受けるが、このダメージでは戦闘不能にならない。 |
Lv.2 | 敵に与えるダメージが攻撃力×280%に上昇する。 |
Lv.3 | 敵に与えるダメージが攻撃力×300%に上昇する。 |
Lv.4 | ※解放には刻印レベル60が必要 敵に対して追加で自身のシールド値10%のダメージを与える。 追加ダメージは自身の攻撃力300%を超えない。 |
初期 | 「ソウルドレイン」を発動後、シールド継続期間中、一時的にターゲットの20%の攻撃力と30%の防御力を獲得する。 この効果は重複されない。 |
+10 | シールド継続期間中にターゲットが死亡すると、強化効果は戦闘終了まで継続する。 |
+20 | 「ソウルドレイン」を発動後、シールド継続期間中、一時的にターゲットの40%の攻撃力と60%の防御力を獲得する。 この効果は重複されない。 |
+30 | スキル「ソウルドレイン」のシールド継続時間が7秒に増加する。 |
+40 | 「ソウルドレイン」を発動後、シールド継続期間中、一時的にターゲットの50%の攻撃力と70%の防御力を獲得する。 この効果は重複されない。 |
3/9 | ダイモンを攻撃したことがある敵は、3秒間受けるダメージが40%増加する。 この効果は重複されない。 |
9/9 | ダイモンを攻撃したことがある敵は、6秒間受けるダメージが40%増加する。 この効果は重複されない。 ダイモンが死亡すると、味方全体が5秒継続するシールドを獲得する。 シールド値はダイモンの最大HPの20%となる。 |
※最大ランク時
HP | 1800 |
アーマー | 20 |
移動速度 | 200 |
吸着範囲 | 10% |
一定のダメージを受けるたびに、宴が発動され、敵にダメージを与えると同時に自身のHPを回復する。 |
スティッキがダイモンの近くにいる敵に範囲ダメージを与える。 |
【ゲーム内説明】 グレイヴボーンのタンク英雄。 敵のHPを吸い取ってシールドを作り出す。 |
【ゲーム内攻略】 敵のHPを奪って自身のシールドに転換する。 専用装備があれば、さらに敵の攻撃力と防御力を奪える。 戦闘において、タンク役を務めながら、敵に大ダメージを与えることもできる。 『おすすめキャラ』 ロワンは味方のSPを回復させ、ダイモンの必殺技の使用頻度を上げることで、ダイモンはタンクとアタッカーとしてさらに大活躍する。 『その他おすすめキャラ』 |
登場時 | お父さんが言っていた死って、一体どういう意味なんだろう? |
移動時 | なな、はち……く……じゅう、来年になったら十歳になるんだ。 |
通常攻撃 | —— |
スキル1 | —— |
スキル2 | お前たちは悪者だ。あっちに行け! |
スキル3 | 僕……ゲホゲホ、僕に構うな!! |
必殺技 | うう、頭が……痛い! |
勝利時 | ゲホゲホ、僕たちの勝ちだ。 |
神話時 | もうこれ以上……お父さんとお母さんと……離れたくない…… |
旅館 | ゲホゲホ、キキはここが好きなんだって。キキが好きなら、僕もここに住むことにするよ。でもここに住んでる大人の人たちちょっと変だね |
※未実装
天の女神様、僕の声、聞こえる? 僕の名前はダイモンーー
女神様は僕のことを知らないかもしれない。だって今日、はじめてあなたにお祈りしているからーー
僕にはとても忙しいお父さんととても優しいお母さんがいるんだ。僕のお父さんはお医者さんで、お母さんは服を縫うお仕事してるの。すごいのはね、お母さんは街で一番裁縫が上手ってこと! パラティ姉さんのスカートも、トットおじさんの結婚式に着た礼服も全部お母さんが作ったんだ。それからキキの服も。ほら、見て! あっ、そうだ。キキのことを紹介するね。彼は僕の一番のお友達で、6歳の誕生日の時にお母さんがプレゼントしてくれたんだ。
そうだ! 僕、もうすぐ9歳になるんだよ。見てよ、すごいでしょ?
あのね、僕、聞いたんだ。戦争に行ってるひとたちは、みんなマントを着て、大きな馬に乗って、僕たちを守ってくれるって。お母さんが教えてくれたよ。でもそのひとたちは、みんな傷だらけで、帰って来れないひともいっぱいいるんだって。お父さんはそのひとたちを助けるために、戦争に行ってるんだ。お母さんが服を縫うみたいに、傷口を縫ってあげてるって聞いたの。お父さん、すごいお医者さんでしょ? 僕の将来の夢もお医者さんだったけど……。実はね、僕、病気なんだ。だから、1人でお外に行っちゃダメだし、お友達とも遊んじゃいけないってお母さんから言われてるんだ。お父さんはすごいお医者さんだけど、お仕事忙しいから僕のこと診れないんだって。しょーがないよね。傷だらけのひとたちをいっぱい助けてるんだもん。僕、がまんしなきゃ。
ねえ、女神様……。お母さんの言うことをよく聞く子は、女神様が願い事を叶えてくれるって、おじいちゃんが教えてくれたんだけど、ほんと? 僕、いっぱい言うこと聞いてるよね? お願い事聞いてくれるかな……?
あのね、実は……このあいだ……。僕、お母さんに内緒で、こっそりお外にでかけたんだ。1回だけ! 約束破ったのは1回だけだよ? だから、最後まで聞いて……。
僕ね。みんなと一緒にお外で遊びたかったの。だって、かけっこしたり、鬼ごっこしたり楽しそうなんだもん。だけど、みんな僕のこと無視したんだ。どうして? って聞いても答えてくれなくて。そしたら、サリナが石を投げながら、僕のお父さんは悪者だって言ったんだ。背の大きなピーターは僕を押し倒して、キキを奪おうとしたの。大事なお友達なのに……。キキはね、お母さんが夜遅くまでお仕事してる時、ずっと僕についててくれるんだ。僕の内緒のお話もいっぱい聞いてくれたの。ほんとに、ほんとに大事なお友達なんだ……。それなのに……。ひどいよ……。なんでいじめるの? 僕が病気だから? キキをいじめるの、やめてって言ったんだよ。僕の一番のお友達だからって。でもやめてくれなかったんだ……。女神様はキキの声が聞こえる? キキは、僕のことをいい子だって言ってくれた。悪い子は自分の腕をもぎ取った、ピーターだって言ってるんだ。キキはこの事を、お母さんに言いつけたほうがいいって言ってたけど、僕、言わなかったんだ。だってお母さん心配するでしょ? それに、いつも夜遅くまでお仕事してるから。邪魔したくないんだ。だけど、この前見ちゃったの。服を縫いながら泣いてるところ……。人はとても痛いときと、悲しいときに涙を流すんだってキキが教えてくれた。それってほんと? お母さんに、どこか痛い? 悲しいの? って聞いても笑うだけなんだ。女神様は、お母さんがなんで泣いてたか知ってるの?
ねえ、女神様……。僕、いい子だよね? お母さんの言うこと、いっぱい聞いてるよね? だから……お願い事、聞いて。
僕とても苦しいんだ……。冬が来てから、毎日お腹こわしたり、熱を出したりするようになっちゃったの。お母さんはすぐ良くなるって言ってくれたけど、頭は痛くなるし、身体も力が入らないんだ。お父さんに治してもらいたいけど、ぜんぜん帰ってこなくて……。冬祭りにも帰ってこなかったんだ。女神様……僕のお父さんは、サリナの言っていたとおり、悪者なの? 窓の外を見るとね、雪がいっぱい積もってて、太陽の光でキラキラしてるんだ。いいな、触りたいなって思ってたら、サリナとピーターが楽しそうに雪だるまを作ってた。
「お母さん、僕もお父さんと一緒に雪だるまを作りたい」
返事がなかったから、お母さんを見たの。困った顔しながら、僕の頭をなでるだけで何も言わないんだ。わがままだったのかな……? そしたらね、ウィルおじいちゃんが、女神様に祈り始めたんだ。
「……神よ。もしこの病が……報いだというのなら、この老いぼれに報いを受けさせてくれ」
元気だったおじいちゃん。今はもうヨボヨボになっちゃった。お母さんも、すっごくきれいだったのに、最近顔色悪いんだ。
「ねえ、お母さん。病気になっちゃってごめんね。あまりご飯食べられなくてごめんね。いつも悲しい思いをさせてごめんね」
涙を流したくないけど、すごく痛いよ。でも、この痛みはもうすぐ終わるんだって。僕たち、もうすぐ新しいところに行くってキキが教えてくれたんだ。でもどこに行くんだろう? お母さん、僕がいなくなったら、きっと悲しくて泣いちゃうよ。
女神様お願い……。お母さんを悲しませないために、新しいところに行ったあと、お母さんたちに僕の居場所を知らせてほしいんだ。だって、新しいところに行ったまま、お父さんに会えなくなるの、いやだよ。
僕、お父さんに会いたい…………お父さんや、お母さ……んと……離れたく……なーー
ーー男が目を覚ますと、キャンプ道具や荷物が散乱し、馬車の名かも荒らされていた。金目のものは全て奪われ、馬車を引く馬の姿もなかった……。月明かりがその惨状を残酷にも照らしている。
男は霧がかっている森を見渡し、死体が転がっていないことに安堵した。
「よかった……! レグニッツはうまく逃げてくれたようだ。きっと安全なところに隠れているのだろう」
彼の名前はジョーラ。レグニッツという息子を持つ、旅の商人だ。今回は成人して間もない息子を連れて、仕入れの旅に出ていた。彼は息子と2人きりの旅をとても大事にしている。長年レグニッツに寂しい思いをさせてしまった罪滅ぼしのようなものだ。ジョーラの妻は、身体がとても弱く、レグニッツを出産すると同時に帰らぬ人となってしまったのだ。レグニッツにとっては、ジョーラが唯一の家族である。しかし彼は、レグニッツがまだ幼いというのに、世界各地を飛び回る仕事をしていたため、隣の夫婦の家に息子を預け、長年家を空け続けていた。年に数回、家に戻ってくることもあったが、忙しいジョーラは生活費だけ渡して、すぐに旅立っていった。彼は息子を構ってあげられなかったことにずっと後悔していた。それゆえに、息子が成人すると、ジョーラはレグニッツを自分のそばに置き、2人で商売の旅をするようになったのだーー
彼らの旅は順調に進んでいた。特に今回の旅で、ジョーラはレグニッツの意外な才能を目の当たりにしたのだ。今まで父親の後ろで商売を見ていただけのレグニッツに初めて交渉を任せてみたのだ。すると、初めてとは思えないほど顧客とうまく接していた。さらに、お金の計算に関しても抜け目がなく、商人としての素質を持っているようだった。ジョーラはやはり、商人の息子は商人なのだと嬉しくなるのだった。
だがーー
不運なことに2人は野盗に襲われてしまって……。
なぜかジョーラの記憶は曖昧だった。覚えているのは、キャンプの準備をしている最中に突然野盗の集団がやってきたということと、レグニッツに早く逃げるように言って、野盗集団と戦ったということ……。
その後の事は何も覚えていない。ジョーラは長年旅をしていたので、ここ一帯で野盗が出現する事はよく知っていた。本来ならば、賞金稼ぎを雇って警護を依頼するべきだが、仕入れに予算をほとんど使い切ってしまったため、雇えなかったのだ。それに、ジョーラは息子と2人の時間を邪魔されたくなかった。商人のいろはをレグニッツだけに教えたいという思いから、2人だけで旅をすると決めていたのだ。
だが、まさかこんなことになるとは……。
ジョーラは息子を捜しに行こうとしたが、どの方角に逃げたのか全く思い出せなかった。立ち止まっていても仕方ないと考えたジョーラは、まずは自分の勘に任せて捜そうと動き出す。森の小道を進んで数時間ーー
気のせいだろうか……。ここは以前も通った道のように思える。だが、それがいつなのか……全くわからない。
周りは霧に包まれ、まるで自分の心と比例しているかのように、焦れば焦るほど霧もどんどん濃くなっていく。時折、背後に気配を感じて振り返るも、鬱蒼と茂る森と霧しかなかった。
(レグニッツ……どこにいるんだ?)
目を凝らしながら森を進んでいくと、人影のような物が横切っていった。
「レグニッツなのか!?」
急いでその場所に向かったが、誰もいなかった。こんなことが何度か続き、ジョーラはだんだんと疲弊してくる。彼は恐怖心を紛らわせるため、息子を捜すことだけに集中して先に進んだ。
しばらく歩いていると……。突然、霧の向こうから声が聞こえてきた。今度こそ……と思い、駆け寄ると、枯れ木の下に8、9歳くらいの男の子が倒れていたのだ。男の子は白い服を纏い、小声でなにかつぶやいていた。こんな森深くにどうして子どもがいるのか、不思議に思いながらジョーラは話しかけた。
「坊や。私は今、息子を捜しているんだ。年は15歳、名前はレグニッツ。背はあまり高くなくて、灰色の服を着ている。この近くで見なかったかい?」
男の子が顔を上げると、まるで大病を患っているかのように顔面蒼白だった。その子はゆっくりと首を横に振る。
「見てない」
消え入りそうなぐらい小声で答えてから、再び顔を下に向け、誰かに話しかけた。
「キキ、君は知っているの?」
男の子の目線を追ってみると、そこには人形が置いてあった。
「キキも知らないって」
「キキ?」
「うん。本当の名前はスティッキ。友達なんだよ。僕はキキって呼んでるんだ」
男の子は立ち上がりながら、人形をジョーラの目の前に持ち上げた。
「キキ、ごあいさつだよ! あのね。キキは人と話すのが大好きなんだ!」
ジョーラは少し困惑していた。人形はところどころ破れていて、縫い合わせた跡が見える。開いている口を見ていると、なぜか自分に向かって笑っているように感じた。だんだんと怖くなってきたジョーラは、キキと呼ばれる人形を直視できず、つい目を背けてしまった。
「キキが好きじゃないの?」
そんなジョーラの反応に、男の子が少しガッカリした様子で尋ねる。彼は慌てて取り繕い、人形に視線を合わせて挨拶をした。
「や、やあ! キキ。はじめまして。よろしくね」
「ふふ。キキもよろしくって言ってるよ」
「それじゃ坊や。私は息子を捜しに行かないといけないから。君もこんなところにいないで早くお家に帰りなさい」
「僕のお父さんとお母さんなら、おじさんの捜してる人を知ってるかもしれない」
「なんだって!? 君のお父さん達はどこにいるんだい?」
「あそこにいる」
男の子は霧の向こうを指しながら言った。
「それじゃお父さんとお母さんの所に連れて行ってくれるかな?」
「いいよ!」
男の子は嬉しそうに答え、軽い足取りで案内を始めたのだった……。ジョーラは男の子に連れられ、森の奥深くまで進んでいく。ふと、男の子の後ろ姿を見ると、白い服を着ているのではなく、包帯が巻かれていたのだ。それに気づいた瞬間、怯んでしまったが、レグニッツの行方を知るためなら……と、気持ちを切り替えて付いていくのだった。
しばらく進むと、薄っすらと明かりが見えてきた。近づいてみれば、それは篝火だということに気づく。
「お父さん、お母さん!」
男の子がその明かりに向かって走っていくので、ジョーラも一緒に行くと、その篝火の前には男と女が座っていたのだ。男はやせ細っていて、生気が感じられないくらいの顔色だった。女は失明しているのか、両目に布があてられていた。
「おかえりなさい」
女はとても優しい声で男の子を迎え、頭をなでている。そして、小声でなにかを話すと、男の子は頷き、すぐに霧の中に消えていった。
「迷子の旅人さん、こちらで少し休まれてはいかがですか?」
女は目が見えないはずなのに、ジョーラの方向に顔を向けて話しかけた。
(この一家、なんか変だ……)
ただならぬ空気を感じたジョーラは、2人に近づくかどうかしばらく迷ったが、息子を捜しに来た目的を思い出し一歩踏み出した。
「実はーー」
彼は息子の行方を聞いて、もし知らなければすぐにここを離れようと思っていた。しかし、話し終わる前に男が口を挟んできた。
「何を捜しているか私は知っている、ジョーラ」
「ど、どうして私の名前を?」
自分が何者か名乗っていないのに、ふいに名前を呼ばれて後ずさってしまう。男は自分のそばに来るよう手で合図しながら話を続ける。
「レグニッツがどこにいるか知っている」
(もしかして、さっきあの子が教えたのか?)
なぜ自分の名前や息子を捜していることを知っているのかは気になるところではあるが、背に腹はかえられない。ジョーラはすぐに警戒を解き、男に近づいた。
「息子はどこに?」
「その前にジョーラ。ここがどこだか知っているのか?」
「ここはミールタウンから約200㎞離れたカラスの森でーー」
「違う、ここは魂が帰る場所、迷魂の地だ」
ジョーラは男の言うことが理解できなかった。いくら記憶が曖昧だからといって自分がどこにいるか間違えるはずがない。しかし、それでも息子の行方を聞き出すため、彼は気持ちを落ち着かせながら言った。
「迷魂の地? 聞いたことがないな」
「ここは迷える魂が集う場所。人間は誰もが長生きすることを望む。そして中にはそれを望むあまり、自分の死を受け入れられず、魂になった後も自分が死んだことを忘れてしまうことがある。彼らは自身が認めたくないことは忘れてしまうのだ。そんな迷える魂がたどり着く場所はただ一つ。生前の未練が投映される、生と死の世界の狭間……迷魂の地だ。本来ならばここは、魂同士は隔離されるが、一瞬だけ触れ合う時がいくつか存在する」
男が篝火に薪を加えると、さっきまでパチパチと静かに燃えていた炎がその勢いを増した。
「死の神アンナが封印されて以来、この世界の死の法則が乱れ始めている。迷魂の地もまさにその乱れから生まれた産物と言えるだろう。このような無秩序の中で、迷える魂達は投映されたこの地にいつまでも留まり、輪廻を繰り返している。自分の死を受け入れない限り、彼らは永遠の時をこの霧の中でさまようのだ」
「な、なぜ私にそのようなことを?」
男は聞いてもいない話をなぜ自分に聞かせるのだろうか。ジョーラはひどく混乱した。しかし、男は彼の質問には答えず、ただ見つめていて……。
「まさか……そ、そんな、ありえない!」
ジョーラはやっと男の言う意味を理解したが、その事実を認めたくなかった。そう……『認めたくない』のだ。
「これは事実だ。ここへ来るまで不思議な現象が起きただろう? 見覚えのある道、なぜか懐かしいと感じる人影。生前の出来事が、薄っすらと記憶のどこかに残っているがゆえの現象だ」
この男の言うとおり、たしかにここに来るまで見た光景は懐かしく感じていた。ジョーラは言葉を失った。ガンガンと頭の中で警鐘が鳴り響く。渇き切った喉から嫌な呼吸音が聞こえるも、ジョーラは力を振り絞って声を出した。
「もし私が死んでいるとしたら、私はどうやって死んだ?」
「あなたは野盗に殺されたのよ」
横にいた女がため息混じりで答える。
「でもあなたは息子に対する未練が残っていて、自分が死んだことを認めようとしなかった」
「それじゃレグニッツは……私の息子は無事なのか?」
自分の死よりも、息子の安否のほうが心配だったジョーラは、すがるように女に問いかけると……。
「あの子はその場から逃げ、生き延びたわ」
ジョーラはレグニッツの無事を確認できて、安堵する。ほっとしたのも束の間、ジョーラは男が先ほど言っていたことを思い出し、しばらく考え込んだ。
「あんたたちがさっき言っていた、『輪廻を繰り返す』って私は……どれぐらい繰り返している?」
「今回で34回目だ。今宵は迷魂の地に魂が帰ってくる日。毎年この日の夜に、魂の輪廻がおこなわれる。お前は33年前、野盗に殺されてから、毎年この日を迎えている」
「33年……?」
男が口にした果てしない年月を聞いて、ジョーラは愕然とした。かつては仕事で息子の少年時代を一緒に過ごしてやることができず、やっと一緒にいられるかと思ったら、今度は33年もこの場所でさまよい続けていたなんて……。レグニッツは私のいない人生を、一体どのような気持ちで過ごしてきたんだろうか。
「それじゃレグニッツは……。あれからどうなったんだ?」
「彼はあなたの跡を継いで商人になったわ。今ではブライト王国で一番大金持ちの大商人よ」
「そう、か……。ああ……分かっていた。あの子はきっと立派な商人になれると……」
自分がきっちり教えなくても、レグニッツは必ずいい仕事をすると思っていた。ジョーラは涙ぐみながら誇らしげに話す。
「あんたたちはどうして私にこのことを教えてくれるんだ?」
「あなたを助けるため」
「お前をここから解放させるためだ」
女と男がほぼ同時に答えたあと、男はジョーラをじっと見つめる。それまで感情もなく淡々と話してきた男の瞳がなぜか悲しみで揺れているように見えた。
「どうやって私を助けるのだ?」
「彼を見つけてやろう」
男が立ち上がると、いつの間にかその手には大きな鎌が握られていた。そして鎌を持ち上げ、霧に向かって大きく振り下ろした直後、裂け目ができたのだ。その空間の向こう側には、ジョーラのように霧の中で迷子になっている中年の男が立っていた。その男は豪華な服を着ていて、とても気品があるようだったが、何かを捜すようにキョロキョロと辺りを見渡している。気づけば、その裂け目はだんだんと大きくなり、ジョーラ側の空間と一つに融合しようとしていた。やがて空間が一つになると、中年の男はこちらに気づき……。
「どうも、こんばんは。まさかこんなところに人がいるとは……。実は私、2人の子どもを捜していまして。ひとりはアンジェロ、もうひとりはロワンといいます。ふたりとも今、家を出ているのですが、託したい重要な事があるんですよ」
「レ……レグニッツ?」
一目見て、目の前の人物が息子だということに気づいた。既にだいぶ老けた顔つきになっていたが、それでも若い時の面影はまだ残っている。
「……どちら様でしょうか?」
「レグニッツ、我が息子よ。私は……私は……」
彼はそれ以上言葉にできなかった。レグニッツはジョーラの顔を食い入るように見ると、はっと息をのんで驚きの声で言った。
「ちっ、父上!?」
「そうだ、我が息子よ」
「ど、どうしてここに……? あなたは……すでに……これは一体!?」
レグニッツは驚きを隠せなかった。しかしそれはジョーラも同じ。レグニッツがここにいるということは、自分と同じ運命を辿ったということ……。ジョーラは男と女に懇願する。
「彼はまだ若い! ここに来るべき人じゃない。頼む、レグニッツを助けてやってくれ! お願いだ!」
「彼の命はすでに尽きている。これだけはどうすることもできないわ」
「……一体どういうことだ? ここはどこだ? あなた達は誰なんだ?」
混乱しているレグニッツは、同じ質問を繰り返すばかりだった。
「レグニッツ……」
ジョーラは息子に真実を伝えようとするが、なかなか口にできない。すると、男が彼に代わって答えた。
「レグニッツ、お前は2ヶ月前に死んでいるのだ。ここは迷魂の地、魂がさまよう場所だ」
「何を言っている? 死んだだと……? そんなことはありえない! 私は昨日、財務大臣とお茶を飲んでいたんだ! それが……2ヶ月前に死んでいるなんて!」
男はもう一度、レグニッツに告げる。淡々と話すその様子から、こういうことには慣れているようだった。レグニッツが膝から崩れ落ちると、枯れた声でポツリポツリと話し出す。
「私の商会には、まだ私が処理すべきことがたくさん残っている……。それにロワンはまだ幼い。一人前になるにはまだ時間がかかるんだ……。アンジェロにはまだ伝えてないこともある。私はあいつの事をいつも誇りに思っていた。だから、望んでいる道を歩んで欲しいと伝えなければならない……。私は彼らを捜さなければならない使命がある! まだやり残したことがたくさんあるんだ! 死ぬわけにはいかないんだよ!」
必死になって叫ぶレグニッツを見て、ジョーラは男の言葉を思い出した。自分の死を受け入れず、未練を残している者は、ここで永遠に同じことを繰り返し、解放されない。
「聞いてくれ、レグニッツ」
レグニッツに自分と同じ思いをさせまいと、真剣な眼差しを向けながらジョーラは話し始める。
「全てを受け入れよう。子どもたちは、お前がいなくてもきっとうまくやっていける。だからもう手放してやりなさい。ここからは私がお前と一緒に歩んでいくから」
彼はレグニッツの肩にそっと手を乗せる。すると、肩が小刻みに震え始めて……。
「どうしたんだ、レグニーー」
言い終わる前に、ジョーラははっと気づく。レグニッツの瞳には、悔しさで溢れた涙が溜まっていたのだ。
「すみません、父上……。あの時、私が逃げずに父上を助けていたら、こんなことには……っ!!!」
地面に腕を叩きつけ、レグニッツは泣き崩れた。
「お前のせいじゃない。あの時はあれが一番の選択肢だったんだ。さあ、一緒に最後の旅に出よう」
レグニッツはまだ未練を断ち切れないのか、しばらくその場に留まっていた。しかし、瞳から零れ落ちる涙もおさまると、父親を見ながら小さくうなずく。そして2人はそのまま霧の中へと消えていった。
「ねえ、あのおじさんとおじさんの子ども、一緒になれたかな?」
男の子は枯れ木の後ろから顔を出しながら聞いた。
「2人は一緒になれたんだ、ダイモン」
男は静かに答える。
「よかったね! キキ、あの2人一緒になれたよ! 僕とお父さんみたいに!」
男の子は人形を嬉しそうに抱き上げる。
「僕たちもお家に帰ろう! お父さん、お母さん」
男の子はピョンピョン跳ねながら霧の向こうへと走っていった。篝火を消した男と女は、男の子の後を追うように、ゆっくりと霧の中へと消えていったのだったーー
※未実装
お母さんは裁縫店で余った布を使ってダイモンに布人形を作ってくれた。
愛称は「キキ」、主人といつも一緒にいる。
憑依能力者として、ダイモンはこれに命を吹き込み、自分の守護者としていつも持ち歩いている。
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