ニル【ソウルコレクター】

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基本情報

呼称ソウルコレクター
種族(生前)ヒューマン
種族(死後)グレイヴボーン
身長180㎝
趣味・死霊術の研究
・魂の収集
好きなもの面白い魂
嫌いなもの平凡で濁った魂
現在地ソウルタワー
現在の身分ソウルタワーの管理人
人物関係妻:シェミーラ
息子:ダイモン
同僚:サイラス
CV三浦浩一
誕生月5月

データ

陣営グレイヴボーン         
タイプ智力型
メインロール継続アタッカー
サブロールタンク

ステータス

※「HP・攻撃力・防御力」は上限が存在しないため記載しません。

  • Lv.160
  • ランク:エピック+
  • T4装備
  • 絆ボーナスあり
  • 神器なし
クリティカル率59.2           
命中0
回避780
魔法効力0
魔法抑制0
速度19.8
自動回復0
魔法耐性50.7
物理耐性4.9
吸収力0
クリティカル増幅2.5
クリティカル耐性0
洞察0
根性3.5
治療効果0
受ける治癒量0
攻撃速度0
クリティカル回避率1.5
防御貫通0
魔法貫通1
熟知0
受け流し0

スキル

必殺技:ソウルリーパー

Lv.1最も弱っている敵に攻撃力×220%のダメージを与える。
Lv.2ターゲットの失ったHPの1%ごとにダメージが1.2%増加。
Lv.3ターゲットの失ったHPの1%ごとにダメージが2.4%増加。

スキル1:ソウルウェーブ

Lv.1敵の魂を吸い取り、周囲の敵に攻撃力×80%のダメージを与え、合計ダメージの40%を自身と周囲の味方に均等に分け与える。
Lv.2合計ダメージの70%を回復。
Lv.3合計ダメージの100%を回復。
Lv.4ダメージが攻撃力×110%に増加。

スキル2:ソウルアブソーブ【パッシブ】

Lv.1敵味方問わず英雄が倒されると、その魂を吸収して自身の最大HPの22%とSPを70回復する。
Lv.2戦闘終了まで自身の攻撃力と防御力が倒された英雄の15%分増加。

特徴

【ゲーム内説明】
グレイヴボーンのメイジ英雄。
英雄が撃破されるたびにHPを回復し、自身を強化する。

セリフ集

登場時死の向こうには、新たな始まりが待っているのだ
移動時死を受け入れるのだ。
通常攻撃未練を捨て死を迎えよ
スキル1死ね、そして生まれ変われ!
スキル2——
必殺技ようこそ、死の世界へ
勝利時死神の軍門に下るのだ

エンブレム

※未実装

ストーリー

「ようこそ、死の世界へ」

軍医であるはずのニルは、こともあろうに死霊魔術の扉を開いてしまったーー

かつての戦いで得た力を乱用した人間は、欲望に駆られ禁忌を犯してしまう。その名も死霊魔術……。人間は死の恐怖から逃れたいがために、永遠の命を手に入れる研究を、日夜重ねている。

だが、彼は違った……。死というものの本質を見極め、畏怖するどころか死に寄り添い過ごそうとしたのだ。

今から少し前ーー

軍医であるニルは軍隊と共に戦場へ赴き、己の医術で負傷兵たちの手当をして、一人でも多くの命を救えるよう尽力していた。しかし、彼はすぐに残酷な現実を突きつけられる。どんなに手を尽くそうとも、毎日多くの兵士たちの命が奪われていく。こうした日々の中、ニルは自責の念に駆られていたが、多くの死を目の当たりにしているうちに、

人が死ぬというのは当たり前のこと……。特殊なことではない……。

その考えは、ニルの真っ白な心の奥に黒い雫となって落ちていく。一度黒いシミを作ってしまえば、消されることなく広がっていき、あっという間に真っ黒に染め上げていった。そんなニルのもとへ、負傷者が運ばれてきた時のことだった……。いつもであれば、すぐに治療を施すのだったが……。手遅れの状態であるにも関わらず、生きたいという渇望に駆られ、必死に助けを求めてくる兵士たちを見たニルは……

「無駄なあがきをするものだ。その抗いこそが苦痛をもたらすのだ」

「その苦しみから解放してやろう!」

手にしたものは、消毒液でも包帯でもない……愛用のメスだったーー

命を救うことよりも、奪うことに慈悲を感じるようになったニルは、悶え苦しみ、さまよい続ける魂に死の抱擁を迎えさせ、あの世へと案内することを積極的に行うようになっていった。

死の世界に魅入られたニルは、ついに死霊魔術にも手を出すようになり、寝る時間も惜しんで研究を続けたのだった。

まるで研究の成果を試すかのように、慈悲という名のもと兵士を殺しては考察するという日々……。巧妙な技術で死を偽装しているため、まさか軍医ニルの手によって殺されているとは誰も思わなかった。

しかしーー

些細な出来事がきっかけでニルの殺人が白日の下に晒されてしまったのだ。検挙されたニルは法廷で裁かれることに。だが、ニルは法廷で一切自己弁護をしなかった。なぜなら、真意を話したところで、理解されるものではないと始めからわかっていたからである。

そして……彼は殺人の罪で極刑を言い渡されたのだった。死を恐れていなかったニルは、淡々と結果を受け入れ、そして彼の生涯はここで幕を閉じた……。

アンデッドとして生きるためにーー

実は執行直前に死霊魔術の中でも、秘術と呼ばれるものを自身にかけていたのだ。

生と死に縛られない器を得たニルが手にしていたものはメスではない……。彼の手には、死を誘うようなギラギラとした巨大な鎌。その鎌を持って、戦場を渡り歩き、瀕死の兵士たちの魂を刈り取る死神となったのだった……。

「生死を彷徨う人の子よ、大人しく死の抱擁を受け入れるがいい!」

 

絆【団らん】

ーー男が目を覚ますと、キャンプ道具や荷物が散乱し、馬車の名かも荒らされていた。金目のものは全て奪われ、馬車を引く馬の姿もなかった……。月明かりがその惨状を残酷にも照らしている。

男は霧がかっている森を見渡し、死体が転がっていないことに安堵した。

「よかった……! レグニッツはうまく逃げてくれたようだ。きっと安全なところに隠れているのだろう」

彼の名前はジョーラ。レグニッツという息子を持つ、旅の商人だ。今回は成人して間もない息子を連れて、仕入れの旅に出ていた。彼は息子と2人きりの旅をとても大事にしている。長年レグニッツに寂しい思いをさせてしまった罪滅ぼしのようなものだ。ジョーラの妻は、身体がとても弱く、レグニッツを出産すると同時に帰らぬ人となってしまったのだ。レグニッツにとっては、ジョーラが唯一の家族である。しかし彼は、レグニッツがまだ幼いというのに、世界各地を飛び回る仕事をしていたため、隣の夫婦の家に息子を預け、長年家を空け続けていた。年に数回、家に戻ってくることもあったが、忙しいジョーラは生活費だけ渡して、すぐに旅立っていった。彼は息子を構ってあげられなかったことにずっと後悔していた。それゆえに、息子が成人すると、ジョーラはレグニッツを自分のそばに置き、2人で商売の旅をするようになったのだーー

彼らの旅は順調に進んでいた。特に今回の旅で、ジョーラはレグニッツの意外な才能を目の当たりにしたのだ。今まで父親の後ろで商売を見ていただけのレグニッツに初めて交渉を任せてみたのだ。すると、初めてとは思えないほど顧客とうまく接していた。さらに、お金の計算に関しても抜け目がなく、商人としての素質を持っているようだった。ジョーラはやはり、商人の息子は商人なのだと嬉しくなるのだった。

だがーー

不運なことに2人は野盗に襲われてしまって……。

なぜかジョーラの記憶は曖昧だった。覚えているのは、キャンプの準備をしている最中に突然野盗の集団がやってきたということと、レグニッツに早く逃げるように言って、野盗集団と戦ったということ……。

その後の事は何も覚えていない。ジョーラは長年旅をしていたので、ここ一帯で野盗が出現する事はよく知っていた。本来ならば、賞金稼ぎを雇って警護を依頼するべきだが、仕入れに予算をほとんど使い切ってしまったため、雇えなかったのだ。それに、ジョーラは息子と2人の時間を邪魔されたくなかった。商人のいろはをレグニッツだけに教えたいという思いから、2人だけで旅をすると決めていたのだ。

だが、まさかこんなことになるとは……。

ジョーラは息子を捜しに行こうとしたが、どの方角に逃げたのか全く思い出せなかった。立ち止まっていても仕方ないと考えたジョーラは、まずは自分の勘に任せて捜そうと動き出す。森の小道を進んで数時間ーー

気のせいだろうか……。ここは以前も通った道のように思える。だが、それがいつなのか……全くわからない。

周りは霧に包まれ、まるで自分の心と比例しているかのように、焦れば焦るほど霧もどんどん濃くなっていく。時折、背後に気配を感じて振り返るも、鬱蒼と茂る森と霧しかなかった。

(レグニッツ……どこにいるんだ?)

目を凝らしながら森を進んでいくと、人影のような物が横切っていった。

「レグニッツなのか!?」

急いでその場所に向かったが、誰もいなかった。こんなことが何度か続き、ジョーラはだんだんと疲弊してくる。彼は恐怖心を紛らわせるため、息子を捜すことだけに集中して先に進んだ。

しばらく歩いていると……。突然、霧の向こうから声が聞こえてきた。今度こそ……と思い、駆け寄ると、枯れ木の下に8、9歳くらいの男の子が倒れていたのだ。男の子は白い服を纏い、小声でなにかつぶやいていた。こんな森深くにどうして子どもがいるのか、不思議に思いながらジョーラは話しかけた。

「坊や。私は今、息子を捜しているんだ。年は15歳、名前はレグニッツ。背はあまり高くなくて、灰色の服を着ている。この近くで見なかったかい?」

男の子が顔を上げると、まるで大病を患っているかのように顔面蒼白だった。その子はゆっくりと首を横に振る。

「見てない」

消え入りそうなぐらい小声で答えてから、再び顔を下に向け、誰かに話しかけた。

「キキ、君は知っているの?」

男の子の目線を追ってみると、そこには人形が置いてあった。

「キキも知らないって」

「キキ?」

「うん。本当の名前はスティッキ。友達なんだよ。僕はキキって呼んでるんだ」

男の子は立ち上がりながら、人形をジョーラの目の前に持ち上げた。

「キキ、ごあいさつだよ! あのね。キキは人と話すのが大好きなんだ!」

ジョーラは少し困惑していた。人形はところどころ破れていて、縫い合わせた跡が見える。開いている口を見ていると、なぜか自分に向かって笑っているように感じた。だんだんと怖くなってきたジョーラは、キキと呼ばれる人形を直視できず、つい目を背けてしまった。

「キキが好きじゃないの?」

そんなジョーラの反応に、男の子が少しガッカリした様子で尋ねる。彼は慌てて取り繕い、人形に視線を合わせて挨拶をした。

「や、やあ! キキ。はじめまして。よろしくね」

「ふふ。キキもよろしくって言ってるよ」

「それじゃ坊や。私は息子を捜しに行かないといけないから。君もこんなところにいないで早くお家に帰りなさい」

「僕のお父さんとお母さんなら、おじさんの捜してる人を知ってるかもしれない」

「なんだって!? 君のお父さん達はどこにいるんだい?」

「あそこにいる」

男の子は霧の向こうを指しながら言った。

「それじゃお父さんとお母さんの所に連れて行ってくれるかな?」

「いいよ!」

男の子は嬉しそうに答え、軽い足取りで案内を始めたのだった……。ジョーラは男の子に連れられ、森の奥深くまで進んでいく。ふと、男の子の後ろ姿を見ると、白い服を着ているのではなく、包帯が巻かれていたのだ。それに気づいた瞬間、怯んでしまったが、レグニッツの行方を知るためなら……と、気持ちを切り替えて付いていくのだった。

しばらく進むと、薄っすらと明かりが見えてきた。近づいてみれば、それは篝火だということに気づく。

「お父さん、お母さん!」

男の子がその明かりに向かって走っていくので、ジョーラも一緒に行くと、その篝火の前には男と女が座っていたのだ。男はやせ細っていて、生気が感じられないくらいの顔色だった。女は失明しているのか、両目に布があてられていた。

「おかえりなさい」

女はとても優しい声で男の子を迎え、頭をなでている。そして、小声でなにかを話すと、男の子は頷き、すぐに霧の中に消えていった。

「迷子の旅人さん、こちらで少し休まれてはいかがですか?」

女は目が見えないはずなのに、ジョーラの方向に顔を向けて話しかけた。

(この一家、なんか変だ……)

ただならぬ空気を感じたジョーラは、2人に近づくかどうかしばらく迷ったが、息子を捜しに来た目的を思い出し一歩踏み出した。

「実はーー」

彼は息子の行方を聞いて、もし知らなければすぐにここを離れようと思っていた。しかし、話し終わる前に男が口を挟んできた。

「何を捜しているか私は知っている、ジョーラ」

「ど、どうして私の名前を?」

自分が何者か名乗っていないのに、ふいに名前を呼ばれて後ずさってしまう。男は自分のそばに来るよう手で合図しながら話を続ける。

「レグニッツがどこにいるか知っている」

(もしかして、さっきあの子が教えたのか?)

なぜ自分の名前や息子を捜していることを知っているのかは気になるところではあるが、背に腹はかえられない。ジョーラはすぐに警戒を解き、男に近づいた。

「息子はどこに?」

「その前にジョーラ。ここがどこだか知っているのか?」

「ここはミールタウンから約200㎞離れたカラスの森でーー」

「違う、ここは魂が帰る場所、迷魂の地だ」

ジョーラは男の言うことが理解できなかった。いくら記憶が曖昧だからといって自分がどこにいるか間違えるはずがない。しかし、それでも息子の行方を聞き出すため、彼は気持ちを落ち着かせながら言った。

「迷魂の地? 聞いたことがないな」

「ここは迷える魂が集う場所。人間は誰もが長生きすることを望む。そして中にはそれを望むあまり、自分の死を受け入れられず、魂になった後も自分が死んだことを忘れてしまうことがある。彼らは自身が認めたくないことは忘れてしまうのだ。そんな迷える魂がたどり着く場所はただ一つ。生前の未練が投映される、生と死の世界の狭間……迷魂の地だ。本来ならばここは、魂同士は隔離されるが、一瞬だけ触れ合う時がいくつか存在する」

男が篝火に薪を加えると、さっきまでパチパチと静かに燃えていた炎がその勢いを増した。

「死の神アンナが封印されて以来、この世界の死の法則が乱れ始めている。迷魂の地もまさにその乱れから生まれた産物と言えるだろう。このような無秩序の中で、迷える魂達は投映されたこの地にいつまでも留まり、輪廻を繰り返している。自分の死を受け入れない限り、彼らは永遠の時をこの霧の中でさまようのだ」

「な、なぜ私にそのようなことを?」

男は聞いてもいない話をなぜ自分に聞かせるのだろうか。ジョーラはひどく混乱した。しかし、男は彼の質問には答えず、ただ見つめていて……。

「まさか……そ、そんな、ありえない!」

ジョーラはやっと男の言う意味を理解したが、その事実を認めたくなかった。そう……『認めたくない』のだ。

「これは事実だ。ここへ来るまで不思議な現象が起きただろう? 見覚えのある道、なぜか懐かしいと感じる人影。生前の出来事が、薄っすらと記憶のどこかに残っているがゆえの現象だ」

この男の言うとおり、たしかにここに来るまで見た光景は懐かしく感じていた。ジョーラは言葉を失った。ガンガンと頭の中で警鐘が鳴り響く。渇き切った喉から嫌な呼吸音が聞こえるも、ジョーラは力を振り絞って声を出した。

「もし私が死んでいるとしたら、私はどうやって死んだ?」

「あなたは野盗に殺されたのよ」

横にいた女がため息混じりで答える。

「でもあなたは息子に対する未練が残っていて、自分が死んだことを認めようとしなかった」

「それじゃレグニッツは……私の息子は無事なのか?」

自分の死よりも、息子の安否のほうが心配だったジョーラは、すがるように女に問いかけると……。

「あの子はその場から逃げ、生き延びたわ」

ジョーラはレグニッツの無事を確認できて、安堵する。ほっとしたのも束の間、ジョーラは男が先ほど言っていたことを思い出し、しばらく考え込んだ。

「あんたたちがさっき言っていた、『輪廻を繰り返す』って私は……どれぐらい繰り返している?」

「今回で34回目だ。今宵は迷魂の地に魂が帰ってくる日。毎年この日の夜に、魂の輪廻がおこなわれる。お前は33年前、野盗に殺されてから、毎年この日を迎えている」

「33年……?」

男が口にした果てしない年月を聞いて、ジョーラは愕然とした。かつては仕事で息子の少年時代を一緒に過ごしてやることができず、やっと一緒にいられるかと思ったら、今度は33年もこの場所でさまよい続けていたなんて……。レグニッツは私のいない人生を、一体どのような気持ちで過ごしてきたんだろうか。

「それじゃレグニッツは……。あれからどうなったんだ?」

「彼はあなたの跡を継いで商人になったわ。今ではブライト王国で一番大金持ちの大商人よ」

「そう、か……。ああ……分かっていた。あの子はきっと立派な商人になれると……」

自分がきっちり教えなくても、レグニッツは必ずいい仕事をすると思っていた。ジョーラは涙ぐみながら誇らしげに話す。

「あんたたちはどうして私にこのことを教えてくれるんだ?」

「あなたを助けるため」

「お前をここから解放させるためだ」

女と男がほぼ同時に答えたあと、男はジョーラをじっと見つめる。それまで感情もなく淡々と話してきた男の瞳がなぜか悲しみで揺れているように見えた。

「どうやって私を助けるのだ?」

「彼を見つけてやろう」

男が立ち上がると、いつの間にかその手には大きな鎌が握られていた。そして鎌を持ち上げ、霧に向かって大きく振り下ろした直後、裂け目ができたのだ。その空間の向こう側には、ジョーラのように霧の中で迷子になっている中年の男が立っていた。その男は豪華な服を着ていて、とても気品があるようだったが、何かを捜すようにキョロキョロと辺りを見渡している。気づけば、その裂け目はだんだんと大きくなり、ジョーラ側の空間と一つに融合しようとしていた。やがて空間が一つになると、中年の男はこちらに気づき……。

「どうも、こんばんは。まさかこんなところに人がいるとは……。実は私、2人の子どもを捜していまして。ひとりはアンジェロ、もうひとりはロワンといいます。ふたりとも今、家を出ているのですが、託したい重要な事があるんですよ」

「レ……レグニッツ?」

一目見て、目の前の人物が息子だということに気づいた。既にだいぶ老けた顔つきになっていたが、それでも若い時の面影はまだ残っている。

「……どちら様でしょうか?」

「レグニッツ、我が息子よ。私は……私は……」

彼はそれ以上言葉にできなかった。レグニッツはジョーラの顔を食い入るように見ると、はっと息をのんで驚きの声で言った。

「ちっ、父上!?」

「そうだ、我が息子よ」

「ど、どうしてここに……? あなたは……すでに……これは一体!?」

レグニッツは驚きを隠せなかった。しかしそれはジョーラも同じ。レグニッツがここにいるということは、自分と同じ運命を辿ったということ……。ジョーラは男と女に懇願する。

「彼はまだ若い! ここに来るべき人じゃない。頼む、レグニッツを助けてやってくれ! お願いだ!」

「彼の命はすでに尽きている。これだけはどうすることもできないわ」

「……一体どういうことだ? ここはどこだ? あなた達は誰なんだ?」

混乱しているレグニッツは、同じ質問を繰り返すばかりだった。

「レグニッツ……」

ジョーラは息子に真実を伝えようとするが、なかなか口にできない。すると、男が彼に代わって答えた。

「レグニッツ、お前は2ヶ月前に死んでいるのだ。ここは迷魂の地、魂がさまよう場所だ」

「何を言っている? 死んだだと……? そんなことはありえない! 私は昨日、財務大臣とお茶を飲んでいたんだ! それが……2ヶ月前に死んでいるなんて!」

男はもう一度、レグニッツに告げる。淡々と話すその様子から、こういうことには慣れているようだった。レグニッツが膝から崩れ落ちると、枯れた声でポツリポツリと話し出す。

「私の商会には、まだ私が処理すべきことがたくさん残っている……。それにロワンはまだ幼い。一人前になるにはまだ時間がかかるんだ……。アンジェロにはまだ伝えてないこともある。私はあいつの事をいつも誇りに思っていた。だから、望んでいる道を歩んで欲しいと伝えなければならない……。私は彼らを捜さなければならない使命がある! まだやり残したことがたくさんあるんだ! 死ぬわけにはいかないんだよ!」

必死になって叫ぶレグニッツを見て、ジョーラは男の言葉を思い出した。自分の死を受け入れず、未練を残している者は、ここで永遠に同じことを繰り返し、解放されない。

「聞いてくれ、レグニッツ」

レグニッツに自分と同じ思いをさせまいと、真剣な眼差しを向けながらジョーラは話し始める。

「全てを受け入れよう。子どもたちは、お前がいなくてもきっとうまくやっていける。だからもう手放してやりなさい。ここからは私がお前と一緒に歩んでいくから」

彼はレグニッツの肩にそっと手を乗せる。すると、肩が小刻みに震え始めて……。

「どうしたんだ、レグニーー」

言い終わる前に、ジョーラははっと気づく。レグニッツの瞳には、悔しさで溢れた涙が溜まっていたのだ。

「すみません、父上……。あの時、私が逃げずに父上を助けていたら、こんなことには……っ!!!」

地面に腕を叩きつけ、レグニッツは泣き崩れた。

「お前のせいじゃない。あの時はあれが一番の選択肢だったんだ。さあ、一緒に最後の旅に出よう」

レグニッツはまだ未練を断ち切れないのか、しばらくその場に留まっていた。しかし、瞳から零れ落ちる涙もおさまると、父親を見ながら小さくうなずく。そして2人はそのまま霧の中へと消えていった。

「ねえ、あのおじさんとおじさんの子ども、一緒になれたかな?」

男の子は枯れ木の後ろから顔を出しながら聞いた。

「2人は一緒になれたんだ、ダイモン」

男は静かに答える。

「よかったね! キキ、あの2人一緒になれたよ! 僕とお父さんみたいに!」

男の子は人形を嬉しそうに抱き上げる。

「僕たちもお家に帰ろう! お父さん、お母さん」

男の子はピョンピョン跳ねながら霧の向こうへと走っていった。篝火を消した男と女は、男の子の後を追うように、ゆっくりと霧の中へと消えていったのだったーー

ドリーのコーナー

医者であるニルはかつて「命あるものを救う」ことこそを、最大の目的として生きてきた。あまりにも多くの死を目にするまでは…その時彼は初めて気付いたのだ。死は恐れるものではない。死もまた、この世の摂理であると。それならば、死に瀕している兵士達に早めの死を与えることも、慈悲だと言えるのではないだろうか? そうすれば彼らも、生きる苦しみから逃れることができるのだから。

ニルの行いはすぐに知れ渡った。しかし、軍事裁判による死刑宣告は、彼にとって願ってもないことだった。事前にかけた死霊術により、ニルは願い通りにグレイヴボーンへと成り代わり、その欲望は抑えきれないものとなっていた。彼は「究極」の魂を集めることに夢中になっていたのだ。至極凶悪なもの、穢れなき清らかなもの、この世に怒りを抱くもの…人の心とは複雑だ。ほとんどの魂は濁っている。ニルにとっては、ひとつのものに対して極限なまでに「純粋」な心を持つ魂こそ、収集する価値のあるものなのである。

腐り行く自分だったものを見ても、微塵も惜しいとは思わない。身体がもたらす物理的な感覚は確かに貴重なものだ。しかし、魂の解放に比べれば、取るに足らない存在だろう。今の彼には、人にかけられる枷も、道徳も法律も、病も老いもないのだから…ニルを縛るものはもはや何もない。

妻であるシェミーラが息子の死を嘆き悲しんでいるのを耳にした時、ニルはダイモンの墓前に姿を現した。彼は永遠であり、何よりも自由を手にしている。この解脱を誰よりも深く繋がっている家族にも与えてやりたいのだ。ニルは病気でこの世を去った息子と、死を望む妻を共にグレイヴボーンへと変え、一家はようやく団らんの時を迎えることができた。

生前の苦しみは肉体の腐敗と共に消えていく。病の痛みと別れの悲しみなど、もはや彼らには何ひとつ関係ない。グレイヴボーンとしての姿こそが、永遠の寄り添いを得ることができる。これはまさに、死が恩恵であることを証明しているのではないだろうか?

専用装備の説明

※未実装

スキン

冬・冷酷な大鎌

ギャラリー

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